なぜ人々は犬と暮らしたいと思うのか? イギリスの研究より

文:尾形聡子


[photo from Adobe Stock]

どうして犬と暮らしたいと思ったの?

そう聞かれて、犬が嫌いだからと答える人はいないでしょう。自分はあまり好きではないけれど、家族にどうしても飼いたいと言われてしぶしぶ、という人も中にはいるでしょうが、犬と暮らす選択をした人は犬が好きという気持ちを共通して持っているはずです。

先日、家畜化症候群について紹介した記事の中で触れましたが、犬と人はお互いに影響し合いながら共に進化してきたと考えられています。犬を家畜化したのは人ですが、その一方で、犬から影響を受けて人も進化してきたということです。その具体例として、一卵性双生児は二卵性双生児と比べると、犬の飼育状況は一卵性双生児の方がはるかに高い割合で一致しており、「犬を飼う」ということには環境だけでなく遺伝的な要因も関与することが示唆されています。

また、「嫌悪感を抱くもの」は案外生来的なものである、という研究はあちこちで発表されています。たとえば、クモやヘビに対して生まれながらに恐怖心を抱く人がいる、というもので、そのような恐怖心は自らの身を守るために備わったものと考えられています(犬にもそのような対捕食者反応が見られるかどうかは「捕食者に対する遺伝子記憶は犬にあるのか?」をご覧ください)。

このように、好きとか嫌いとか怖いなどと感じる背景には、その対象によっては部分的に遺伝的な影響があることが考えられますが、ともあれ、犬が好きだから犬を飼うというのが犬との生活の大前提には存在しています。それ以外には、どのような理由があるものなのでしょうか。犬をどこから迎えるか、犬について調べる際にどこから情報を得るか、というようなことについては、ここ日本でもペットフード協会が毎年調査していますが、意外にも「どうして犬を飼うのか」についてきちんと調べている文献はそれほど多くありません。そこで、今回は、イギリスの動物保護団体であるドッグトラスト(Dog Trust)によって行われた最新の研究を紹介したいと思います。

イギリスでは多くの飼い主が自分の犬との関係に満足していると答えている一方で、

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