文:尾形聡子
[Image by Karsten Paulick from Pixabay]
他者の目的や意図を汲んで行動の意味を解釈することは、人間社会で円滑なコミュニケーションをとる上で重要です。他者の意図を理解する能力は、人では1歳になる前あたりから見られるようになると言われています。他者との効率的なコミュニケーションは人だけでなくほかの動物にとっても有益であると考えられますが、たとえば動物園で飼育されているチンパンジーをはじめとする霊長類、ウマやオウムなどでは人の意図を汲んでいる様子がこれまでに観察されています。
ならば、もっとも古い家畜である犬ではどうでしょうか。長きに渡り人と生活を共にしてきた犬は、もれなく「人の意図を読む能力」を備えている動物種だと考えられます。犬は人の指差しなどのジェスチャーを理解したり、人の視線の先に注目したりするなど、人の動きや注意状態に対して敏感に反応することができるのは今では周知の事実となっていますが、人の動きの根底にある意図をどの程度理解しているかについてはまだ議論の余地があるとされていました。
そこで、オーストリアのウィーン獣医大学とオランダのHAS応用科学大学の研究チームは「unwilling–unable(できるのにしないのか、それとも、不可能なのか)」の実験パラダイムを利用し、実験を行いました。
[Image by StockSnap from Pixabay]