飼い猫に子犬を紹介する〜仲良くなるために飼い主ができることは?

文:尾形聡子


[Image by JacLou DL from Pixabay]

犬と猫が仲睦まじく寝ている様子を写した画像や動画などを見かけると、思わず頬が緩んでしまうものです。犬と猫はコミュニケーション方法や社会的行動などが異なる動物種ではありますが、友好的に暮らすことは可能です。逆にピリピリとした状態で暮らし続ければ、お互いの生活の質が低下して福祉を損なってしまいかねません。

犬も猫も世界中でもっとも一般的なペットです。両方と一緒に暮らしたいと思う人は決して少なくなく、2015年のイギリスの調査では3,155人中7%の人が実際に両方と暮らしていると回答をしています。ある研究では犬の91%が猫に対して、猫の83%が犬に対して近くにいて快適だという報告もあれば、別の研究では犬の66%、猫の65%が友好的な関係を持つ能力をあらわしているという報告もあります。しかし、同居している犬と猫の両者が威嚇したり攻撃的になったりせずに友好的な関係を築けているかというと、残念ながらすべての関係がいいわけではありません。

これまでの研究から犬と猫が友好的になることと関係する要因がいくつか示されています。2018年の研究では、猫が犬に紹介された年齢が若いほど友好度が高く、飼い主の認識は「犬要因」よりも「猫要因」に影響されやすく、猫の行動に注意することが良好な犬猫関係の促進につながると考察されています。つまり、犬と猫が仲良くなる鍵は猫の方が握っていると考えられます。また、家で過ごす時間が長い猫の方が、外で過ごす時間が長い猫よりも犬に対して友好的であることも示されています。少し古くなりますが、2008年の研究でも同様に、犬と猫の最初の出会いが若い時期であること(猫は6ヶ月齢未満、犬は1歳未満)が友好的な関係を築くのに有効で、若い時期に顔を合わせると、お互いに相手のボディランゲージをよりよく理解することにつながると報告しています。もう一点、すでに飼われている猫に犬を紹介する(その逆ではない)ことも友好的関係構築に影響すると示されています。

すでに一緒に暮らしている猫のあとに子犬や成犬を迎える場合には、猫も飼っている犬のブリーダーを探す、少しずつ段階的に顔合わせをさせる、においを嗅がせ合う、犬と猫それぞれに安全で落ち着ける場所をつくる、最初に顔合わせをするときは犬をリードで繋いでおく、猫の行動やボディランゲージに気を配る、接触を制限するなどが推奨事項として一般的に挙げられています。ただし、飼い主が実際にどのようにして猫に犬を紹介しているのか、どのようなことが問題になっているのかについてはほとんど調べられていません。

英国のドッグトラストとブリストル大学の研究者らは、犬猫の良好な関係づくりには猫に新しく犬を紹介する際の管理方法への理解を深めることが重要だと考え、飼い主が報告した「望ましい子犬の行動」に関連する要因を特定し、犬猫関係に対する飼い主の認識の調査を目的として研究を行いました。


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子犬が猫に対してとりがちな行動は?

研究者らは犬の健康や福祉、行動に関する研究のために、生涯にわたって追跡するためのデータベース「Generation Pup」のデータを使用。このデータベースは2016年以降、イギリスとアイルランドに暮らす16週齢未満の子犬の飼い主に対して登録を呼びかけ、データを蓄積してきています。

解析に有効なデータ4,678頭の22週齢以下の子犬のうち、1,248頭(26.7%)が少なくとも1頭の猫と一緒に暮らしていました。調査時に、すでに飼い主が子犬を猫と引き合わせていたのはそのうちの1,211頭(97%)で、子犬が猫に対してみせた行動は、「遊ぶ(58.9%)」がもっとも多く、続いて「しつこく構うなど、過剰に興奮する(56.6%)」、「追いかける(48.6%)」「用心深くしている(23.9%)」であり、92.7%の子犬が飼い主が望ましくないと考える行動を一つ以上みせていることがわかりました。

一方で、飼い主が望ましいと思う行動だけをみせた子犬は、わずか7.3%。ですが、少なくとも何度かは「穏やかな方法で交流する」様子をみせた子犬が3分の1程度(28.5%)いました。そして、猫に対して攻撃的な行動を示した子犬はごくわずかで1.7%にとどまっていました。

データを統計解析した結果、

  1. 子犬が12週齢未満である
  2. 1日以上の時間をかけて少しずつ引き合わせる
  3. 1歳以上の別の犬が同居している

の3つの因子が、「子犬が望ましい行動だけをみせる」可能性を高めていることが示されました。

また、猫に子犬を引き合わせる際の方法として、「飼い主が主導する」「猫が主導する」の二つのスタイルがあることが明らかになりました。飼い主主導のスタイルとは、飼い主がさまざまな方法で犬と猫の相互作用を管理したり制御したりして引き合わせるタイプのものです。もう一方の猫が主導するスタイルは、いつどのように子犬と接するかを猫に任せるようなタイプになります。このスタイルのうち、飼い主が主導するタイプの方が犬猫の関係が友好的になりやすいことがわかりました。

ただし、猫に任せながらも、猫が子犬と離れたい様子のときには離れられるように介入するなど、両方のスタイルが混ざったアプローチをとる人も多くいました。犬猫関係も時間の経過とともに変化していくもので、最初はうまくいかなくても、徐々に円滑な関係になっていくような様子も観察されたそうです。

研究者らは、猫と子犬がポジティブな相互作用をする機会を増やすには、飼い主主導で子犬が小さいうちに、動物の反応に応じて数日から数週間にわたって段階的に引き合わせることを推奨するべきであると結論しています。


[Image by joy from Pixabay]

日本において、2019年のSBIいきいき少額短期保険株式会社のアンケート調査では、犬と猫の両方を飼っている人は11%という数字が出ています。また、一般社団法人ペットフード協会の調べでは、コロナの影響もあり、新たに犬や猫を飼い始める人が増加傾向にあると報告されています。

今は猫を飼っているけれどそのうち犬を迎えたいと考えている人、その逆の人、いずれにおいても、犬猫両方の生活の質を低下させたり福祉を損なったりしないようにするためには、飼い主が犬や猫のボティランゲージを適切に読める力が重要になってくるのではないかと思います。

ちなみに今回の研究では先住犬の頭数が増えれば増えるほど、猫に対して望ましいとされる行動のみが観察される傾向にありました。これはまさに、子犬は母犬だけでなくほかの犬からも社会的参照や社会的学習をする生き物である、ということを示した結果だと思います。それらについて詳しくは以下の記事をぜひご覧ください。

未知との遭遇!そのとき子犬は人からの情報を手掛かりにするか?(社会的参照)
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子犬は観察して学ぶ~犬からも、そして人からも(社会的学習)
文:尾形聡子 犬は同種の犬のみならず人の行動も観察し、そこから学ぶことのできる動物です。“先住犬の真似ばっかり!”とか、“私のことを…【続きを読む】

【参考文献】

Introducing a Puppy to Existing Household Cat(s): Mixed Method Analysis. Animals, 12(18), 2389, 2022

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