知ってる?犬の尻尾の本当の役目?

文:尾形聡子


[photo by Nathan Rupert]

犬にはいくつもの尻尾の種類があります。柴や秋田など日本犬に多いクルリと巻いている「巻き尾」、地面の方に垂れ下がっている「垂れ尾」、逆にお尻から垂直に立った状態の「立ち尾」、鎌のような緩やかな曲線を描く「鎌尾」、カワウソのような尻尾として名付けられた、付け根が太くて丸い「オッターテール」、らせん状に巻いている「スクリューテール」、生まれつき短い尾の「ボブテール」などなど、実にさまざまな尻尾の形を持つ犬が存在しています。

そんな犬の尻尾ですが、こんなに形状が違っていても同じ役割をはたしているものなのでしょうか?

動物の尻尾の役割

地球上に暮らす多くの動物には尻尾があります。たとえば樹上で暮らす小型のサルやリスなどは尻尾を使って器用に木にぶら下がることができます。樹上生活をする動物にとっての尻尾は、生存戦略上重要な器官です。猫は尻尾で木にぶら下がることはありませんが、高いところに飛び乗ったり飛び降りたりするときなどには尻尾を使って体のバランスを取っているといいます。また、小さな獲物を捕まえるときの急速な動きやターンをするときにも重要です。体のバランスを制御することは、野生動物にとって複雑な環境の中を滞りなく移動するために不可欠と考えられています。

動物の尻尾は回転運動に関わる慣性モーメント(物体の回転させにくさ)に影響する役割を持ち、とりわけ小型動物の旋回時に重要だとされています。人の場合は尻尾がないため、たとえば体操選手などは代わりに腕を使うことで慣性モーメントを変化させ、効率的に体をひねる動きができるようになります。

犬の属するイヌ科動物の生活領域には、空間的な高さを含んだ移動はありません。そのため、立体的に動く必要がある動物より、ある意味体のバランスがとりやすい生活環境にあると言えます。そのような、地上だけで暮らす犬の尻尾の役割として、これまで、他の動物と同じように機敏に動くときの体のバランスをとったり、効果的に加速したり、スピードを出して走っている最中に急旋回するときなどに利用されているだろうと考えられていました。たとえば、アジリティ競技の動きをするような時に効果的に役立っているというようなことです。

また、イヌ科動物では日常の動作において尻尾の上げ下げをすることが知られています。私たちが目にする犬の尻尾にはそれに加えてさらにさまざまな表情がありますが、複雑な尻尾の動きが生存戦略となっているかどうかについては、犬を始めとするイヌ科動物意外では考えにくいものだと言われています。

このように、犬の尻尾の本来の役割が未だ不透明なことから、ドイツのマックスプランク研究所、フリードリヒ・シラー大学イェーナ、アメリカのジョージア工科大学の研究者らは犬の尻尾の目的とする役割を解き明かそうと10年間にも及ぶ研究を行いました。そして、犬は尻尾を体の安定化に

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