甲状腺機能低下症、なりやすい犬種とリスク因子〜イギリスでは400頭に1頭が発症

文:尾形聡子


[photo by Ryan Hyde fromUnsplash]

甲状腺機能低下症は広く犬に見られるホルモン障害で、甲状腺から分泌されるホルモンが減少する病気です。甲状腺ホルモンは身体のあらゆる臓器の代謝に関わる働きを持つため、分泌の低下により無気力になったり眠ってばかりいたりする、運動を嫌がる、季節に関係なく寒がる、食欲が増加していないのに体重が増える、脱毛などの皮膚症状が出たりするなど、全身にさまざまな症状をあらわします。進行すると顔の皮膚に水がたまって厚ぼったくなることから「悲しげな表情」になるのも特徴とされています。

ごく稀に先天性の甲状腺異常により発症する場合もありますが、多くが後天性のケースで、甲状腺そのものが萎縮したり破壊されたりして甲状腺ホルモンの分泌が減少することで発症します。また、中年齢以上で中型犬以上のサイズの犬が発症しやすい傾向にあると言われています。

これまでに、ドーベルマン、ジャイアント・シュナウザー、シェットランド・シープドッグなどのいくつかの犬種で甲状腺機能低下症にかかりやすいとの報告があり、遺伝的な要因も発症に関与していると考えられています。ドーベルマンやジャイアント・シュナウザーについては、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子との関連が示されており、最近の研究からそのほかにもいくつかの遺伝子座が発症リスクとの関連性があることが明らかになりつつあります。甲状腺機能低下症は人と同様に、犬も遺伝的要因と環境要因との両方が影響して発症する複雑な病気なのです。

甲状腺機能低下症はすぐに命に関わるような病気ではありません。しかし、発症すれば生涯この病気と付き合っていかなくてはならない慢性疾患で、放っておけば生活の質を低下させる可能性のあるものです。早期発見をして生活の質をなるべく落とさないで済むよう適切な治療を受けること、さらにはブリーダーが犬の健康を向上させるためにも病気の発症状況の把握は重要になります。

そのためには甲状腺機能低下症の発症リスクに関わる要因を知ることが大切ですが、以前報告された情報は比較的古いものばかりでした。そこでイギリスの王立獣医科大学の研究者らは甲状腺機能低下症の発症に関わるリスク、そしてかかりやすい犬種とかかりにくい犬種について再確認する必要があると考え、大規模調査を行いました。


[photo by Rebecca Scholz from Pixabay]

高リスク犬種、低リスク犬種、そしてリスク因子は?

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