あなたの犬、ズーミーズしてる?

文:藤田りか子


[Photo by Sue Cro]

サーチ&レスキューのトレーニングのような隠れん坊ごっこで、我が犬怖がりミミチャンを人馴らしさせようとしたことがあった。友人に森の中の藪に隠れてもらって、それをミミチャンが探すというものだ。探し当てたら隠れている人が彼女にボールを投げてご褒美。ちなみにこれは彼女5ヶ月齢のときで、人馴れについては私もまだまだ希望を持っていた頃だった。

そして案の定トレーニングは大失敗。人を見つけたとたんに怖いがゆえに、ウーワンワンと吠え始めた。急いで呼び戻そうとして名前を呼んだ….。と!こちらに戻るかと思いきや、彼女は肩の毛を逆立てていきなり狂ったように森をグルグル駆け回り始めたのだ。岩を駆けあがり、倒木をジャンプし、藪に飛び込んだとおもったら突然方向を変えて、また走る。隠れていた友人はポカンとしてその様子を見ていた。

この狂ったような走り回り行動、みなさんも目撃したことがあるのでは?英語にはこの行動についての言葉がちゃんと存在していた。Zoomies(ズーミーズ)という。もっとアカデミックな用語を使うとFrenetic Random Activity Periods の頭文字をとってFRAP。日本語に直訳すと「熱狂的でたらめ行動期」といったところか。

なぜ犬がズーミーズを起こすのか、いくつか理由がある。というのもいろいろな状況で起きているのをこれまで観察してきたからだ。前述の場合だと、ストレスを解消する手段とも言えそうだ。

「あー、怖かった!!!」

という気持ちを拭い去るべく走ってその抑圧された感情を一気に爆発させた。もうひとつよくあるシナリオは犬がシャンプーを終えた後。それまでお母さんの言う通りに風呂場でじっとしていたストレスを一気に吐き出すかのごとく、家の中を走り回る。

しかしズーミーズは必ずしも犬にとってネガティブな事象の後だけに起こされるものではない。アシカ(ミミチャンの母犬)も若犬の頃は頻繁に、そして5歳になった今でも庭に出ると狂い走りを時々行う。こちらはしばらく家の中で静かにしていたことで、庭に出され溜まっていたエネルギーを爆発させようと走り始めたのだと思う。


[Photo by Angie Shyrigh ]

あるいはラッコがリードをつけられ自由がきかないときにもアシカはこれをよく行う。彼のところにサッと走り寄ってきたかと思うと、からかうようにして周りを走り、そしてラッコが向かっていくと尾を後脚の間に入れ背中の毛を逆立て狂ったようにグルグルと駆け回る。走っている様子を見ると「このスリリングさ最高!!」とでも言わんばかり。いわば、ジェットコースターに乗る人間のようなものだろう。怖いけどスピード感がたまらなく楽しい!そんな感じだ。こんなとき、ラッコのリードを放つとしばらく走り回るのだが、追いつかれるとラッコに寝転がらされ、遊びは一気に終わってしまう。だから、アシカとしては私がラッコをリードで保持してくれている方が嬉しいのかもしれないが、ラッコにはちょっと気の毒だ。

そして全ての犬がズーミーズを起こすとも限らない、というのも私の経験である。これまで5頭の犬と暮らしてきたが、ズーミーズを頻繁に行うのは、ミミチャンとアシカだけ。さすが母と娘、似たもの同士。

動物行動学の博士号を持ち現在はカルフォルニア州で犬の行動セラピストを行っているジル・ゴールドマンがアメリカンケネルクラブの記事にて以下のように語っている。

「犬も溜まったエネルギーを爆発させることがあります。いわば火山の爆発と同じですね。FRAPはつまり溜まったエネルギーを解放させる、という目的があります。なので、この行動は全く正常ですし犬にとっては自然なものです」

というわけでズーミーズを見せるからといって心配しなくても大丈夫!ただし、どういう状況後にこれが起きたのか考えてみる必要はありそうだ、と前出のゴールドマン博士。ひょっとして普段の運動が少なすぎる、あるいはメンタルへの刺激が足りていないのかもしれない。そしてかなり頻繁に起きているのであれば、もしかして何かの病気の症状かもしれないのでそのときはぜひ獣医師ところへ!

こちらズーミーズをしている犬を集めたYoutube動画をどうぞ!↓