メス犬の不妊化手術、年齢ではなく思春期を軸に行動への影響を調査

文:尾形聡子


[photo by Dirk Vorderstraße]

犬の不妊化手術は日本では一般的に行われている外科的な処置です。手術に伴うメリットとして、生殖器系の病気のリスクを減らす、行動上の問題を減らす、望まれない個体の増加を抑制するなどが挙げられています。

手術は何のためにするのか?これまでの議論と研究

しかし、手術にはメリットがある一方でデメリットもあることが、近年の研究により示されています。健康への影響については犬種によっても違いがあることが多くの研究で示され、一時期、早期の手術を推進してきたアメリカでは、犬の健康への影響の大きさを鑑み、適切な時期を見定めるための研究が行われました(「アメリカから、病気リスクを回避するための犬種別不妊化手術適齢期ガイドライン」参照)。それによれば、犬種によって適切な手術の時期が異なり、十把一絡げに早期の手術がいいとは必ずしも言えないことが示されています。

また、犬の認知行動学で世界的に有名なアレクサンドラ・ホロウィッツ博士は、アメリカにおける家庭犬の不妊去勢の風潮へ一石を投じています。それについては藤田りか子さんがヨーロッパの状況とも比較しながら「アメリカの家庭犬不妊去勢の風潮を嘆く- 便利なペット文化に警鐘を鳴らす」にて紹介しています。

その記事の中には病気発症リスクの軽減だけでなく、問題行動の対策として手術を選択する人が決して少なくないだろう、と博士。そして、

「将来望まれない犬を増やさないためにも、不妊去勢を!」と我々は叫ぶ一方で、望まれない犬がどうしてこんなに溢れているか、その問題の背後にあるものに関しては、一切口をつぐんだまま(Here! we say. In the future there will be fewer unwanted dogs! As for our actions as a species in creating this problem, we are quiet.)

と指摘しています。

個体数の抑制に関しては、野良犬の個体数減には効果的につなげることはできるでしょうが、基本的に家庭の中できちんと管理して飼われている一般の家庭犬にはあまり関係してこないところだと思います。手術の理由が本当はどこにあるのか?トレーニングの代替として安易に手術を選択してはならないと博士は警鐘を鳴らしています。

このような議論がなされる中、不妊化手術が犬に及ぼす行動への影響についても数々の研究が行われてきています。一番よく知られている手術理由は、オス犬の攻撃性を低くするためというものでしょう。しかし、それについては

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