アメリカから、病気リスクを回避するための犬種別不妊化手術適齢期ガイドライン

文:尾形聡子


[photo by Sam Saunders]

なぜ、犬に不妊化手術を行うのでしょう?

動物愛護的な観点からすれば、大きな目的は犬の個体数の管理にあると思います。一方、個人の飼い主にとっては、愛犬の病気や問題行動に関する対応が手術を受ける理由になることが多いのではないかと思います。日本では一般の飼い犬に手術を行うことは義務化されていないものの、手術をする飼い主が圧倒的に増えているのが現状です。

ただし、手術の時期によって病気の罹患率と行動の変化に影響があることがこれまでの研究により示されてきています。病気との関係については以前『するかしないか、するならいつか?不妊化手術と病気の関係』で、アメリカでの研究をいくつかまとめて紹介しました。その中の、ラブラドール、ゴールデン、ジャーマン・シェパードにおける不妊化手術と病気発症との関係を調べたカリフォルニア大学デイビス校の研究者らは、手術の意思決定をサポートするための情報を提示するため、さらに犬種を増やして解析を行いました。なぜならこれまでの3犬種での研究から、犬種によって出てくる特定の病気への影響が異なることが示されていたからです。

https://inuiwaku.net/?p=25222

研究者らは対象を32犬種(プードルはスタンダード、ミニチュア、トイ別々に解析)加えて全部で35犬種にしました。不妊化手術による犬への長期的な健康リスクの増加を回避するため、それぞれの犬種における推奨される手術時期についてのガイドラインを作成し、『Frontiers in Veterinary Science』に発表しています。

対象疾患と対象犬種

長年にわたりこの研究を主導してきたベンジャミン・ハート博士は、これまでの3犬種(ラブ、ゴールデン、Gシェパ)のときと同様に、カリフォルニア大学デイビス校の動物病院に来院した動物のデータを利用して分析を行いました。そうすることで、疾患の診断基準などのばらつきが抑えられ、データの直接比較が可能となるからです。対象とされた病気はこれまでの研究から手術の影響を受ける可能性があるとされたもので、以下の通りです。

◆対象疾患

  • 関節疾患:股関節形成不全、前十字靭帯損傷、肘関節形成異常
  • がん:リンパ腫、血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫
  • メス犬のみ:乳腺がん、子宮蓄膿症、尿失禁
  • ダックスフンドとコーギー:椎間板疾患

また、年齢区分と対象犬種は以下になります。

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