健康状態が悪化しているパグは、もはや“典型的な犬”とは見なされない?〜イギリスの最新研究より

文:尾形聡子


[Photo by Shrey Khurana on Unsplash ]

日本に限らず世界的に小型の短頭種人気が続いています。短頭種特有の、マズルが極端に短く平たい顔の可愛さに惹かれる人が多くいる一方で、そのような頭の形を持つがゆえに引き起こされる健康関連の問題を抱えている犬も増えています。そして彼らの健康状態が非常に懸念されていることは、これまでに犬曰くからも数々の記事を通じて発信してきました。

このような状況をとりわけ危機的に捉えている国のひとつ、イギリスでは、短頭種の福祉と生活の質を守るための組織「Brachycephalic Working Group」が2016年に設立されました。そして「Stop and think before buying a flat-faced dog(鼻ペチャの犬を買う前にちょっと待った!よく考えてみて!)」というメッセージを社会に広く発信しつづけています。

先日も、イギリスの犬の寿命を調べた研究を紹介したばかりですが、平均余命の一番短いフレンチ・ブルドッグを筆頭に、ワースト5の犬種はすべて短頭種となっていました。ちなみに日本の研究でも短頭種の寿命に関して同様の結果が出ていることは「犬の寿命、現在どのくらい?」でも紹介しています。

https://inuiwaku.net/?p=40742

https://inuiwaku.net/?p=18608

健康が懸念される短頭種のうちの1犬種がパグです。原産国の中国では古くからパグのような短頭の犬が存在していて、紀元前551年、孔子によって記録された書物の中にも確認されています。パグは1300年代にヨーロッパに持ち込まれました(「最新 世界の犬種大図鑑(藤田りか子)」参考)。

下の絵画は1700年代にフランスの画家によって描かれた絵画ですが、現在のパグとはだいぶ姿形が異なっていることがお分かりいただけると思います。パグに限らず、短頭種の現在の姿は、この数百年の繁殖によって特徴がより強調された結果なのです。


[image from Wikimedia commons]

パグなどの短頭種は見た目の特徴が強調されたのと同時に、その身体的特徴が起因する気道閉鎖症候群(BOAS)や目の病気、皮膚の病気、難産などのさまざまな病気を発症するようになりました。パグはさらに肥満が多く、壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)という重篤な病気に罹患しやすいことが知られています。最近では歩行異常についての報告もあり、それについては以下の記事で紹介しているのでご一読ください。

https://inuiwaku.net/?p=16596

このように、パグの病気に関する科学的なエビデンスは増えているものの、個々の病気に対する研究が多く、一般的な犬の集団とパグとの健康状態全般について比較した詳細な研究がしっかり行われていないのが現状です。そこで、王立獣医科大学の研究者らは、パグの健康懸念に対応していくために大規模解析を行いました。ちなみにこの研究は、2021年に発表されたフレンチ・ブルドッグの健康状態についての研究と同じ研究チームによって行われたものです。

https://inuiwaku.net/?p=37917

パグのかかりやすい病気、かかりにくい病気

研究者らは、

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