犬の寿命、現在どのくらい?

文:尾形聡子

[photo by Taro the Shiba Inu]

犬は体の大きさによって予想される寿命がかなり違う生き物です。ざっくりと、小型犬のほうが大型犬よりも寿命が長い傾向にあります。

犬の寿命が延びているといわれている昨今、日本に暮らす犬たちの寿命は実際どの程度になっているのでしょうか。東京大学の研究者らが東京のペット霊園に埋葬された犬を対象にデータを収集、解析し、その結果を『Journal of Veterinary Medical Science』に発表しました。

研究者らは、2012年1月から2015年3月の間に、東京にある8つのペット霊園に埋葬された12,039頭の家庭犬について解析を行いました。その結果、全体での平均寿命は13.7歳であり、大きく雑種と純血種とに分けると、雑種は15.1歳で純血種は13.6歳となっていました。雌雄差では、オスが13.6歳、メスは13.5歳で性別による有意差は見られませんでした。30年前には8.6歳だった平均寿命が1.67倍も伸びたことは、日本の家庭犬の健康状態が飛躍的に良くなっていることを示すものだとしています。

また、犬種別にみていくと、解析頭数のもっとも多かったミニチュア・ダックスの平均寿命は13.9歳(1,578頭)で死亡年齢の中央値も13.9歳、次いでチワワの平均寿命は11.8歳(1,079頭)で中央値も11.8歳、シーズーの平均寿命は15.0歳(962頭)で中央値が14.8歳となっていました。長生きのイメージがある柴犬では、平均寿命が15.5歳(614頭)、死亡年齢の中央値が15.7歳と、実際に他のどの犬種よりも、また雑種よりも長い平均寿命を持つことが示されています。一方で、もっとも寿命が短かった犬種はフレンチ・ブルドッグで、平均寿命、死亡年齢の中央値ともに10.2歳(151頭)となっていました。

人気大型犬においてはラブラドール・レトリーバーの平均寿命14.1歳(328頭)で死亡年齢の中央値が14.0歳、ゴールデン・レトリーバーの平均寿命が13.1歳(295頭)で中央値が12.9歳となっていました。大型犬ながらも小型犬に劣らない寿命を持つことが示されたといえるでしょう。

Journal of Veterinary Medical Scienceの結果をまとめたイラスト。

では海外での状況はどのようになっているのでしょう。イギリスのケネルクラブに登録された犬5,663頭を対象とした解析結果が『Canine Genetics and Epidemiology』に先日発表されました。

それによりますと、全体の死亡年齢の中央値は10.33歳、死亡原因としては老化がもっとも多く13.8%、次いでがん8.7%、心臓疾患4.9%となっていました。犬種別にみると、もっとも長かったのがウエスト・ハイランド・ホワイトテリアの12.71歳(96頭)、逆にもっとも短かったのがドーベルマンの7.67歳(99頭)でした。

イギリスの研究対象となった犬種は大型犬が多い点が日本とは異なっていることが、寿命が短い結果の一因となったのではないかと考えられます。実際に、1犬種について50頭以上が研究対象となっていた25犬種のうち、14犬種が大型犬でした。

日英両方の研究において共通していた大型犬種のラブラドールとゴールデンにおいては、イギリスではラブラドールの死亡年齢の中央値は11.5歳(728頭)、ゴールデンでは11.75歳(373頭)と日本よりも短い数値となっていました。

中型犬以下のサイズでみると、キャバリアはイギリスでの死亡年齢の中央値は9.75歳(222頭)、日本では13歳(251頭)、ミニチュア・シュナウザーはイギリスでは9.87歳(76頭)、日本では13.2歳(286頭)、シェットランド・シープドッグはイギリスでは11.29歳(56頭)、日本では14.1歳(239頭)でした。いずれにおいても、同犬種における死亡年齢の中央値は日本の方が高い結果となっています。

日英における犬の寿命の差は、犬の飼育環境が異なることも原因のひとつかもしれませんが、もしかしたら、不治の病にかかったときに安楽死を選択するか否かの違いもあるのかもしれないと推測するところです。

愛犬には元気に長生きしてもらいたいと思うものです。ですので、犬の寿命を考えることにはいささか抵抗を感じるかもしれません。しかし、愛犬の寿命をある程度把握しておくことは、加齢による認知機能の低下への気づきにもなりますし、いつか訪れてしまう愛犬との別れの日へ向けての心の準備にもつながる場合があると思います。また、自分の年齢を考えてどのような犬を何歳で迎えるかなどを検討する際のポイントのひとつにもなるのではないでしょうか。

犬の寿命が延びているために老犬介護の問題などが出てきてはいますが、それでもやはり、この30年で犬との生活を長く楽しめるようになったのは嬉しいことですよね。その背景にあるのは獣医療の発展だけでなく、生活環境や食事内容など、飼い主が犬の健康をより気遣うようになってきたことが大きいのではないかと感じています。

【関連記事】

犬の認知力低下を緩やかにするには、トレーニングが効果的
文:尾形聡子 加齢に伴い細胞が老化していくと、臓器や脳、筋骨などに変化が起こります。いわゆる老化は寿命ある生物にとって自然な現象です。自然現象と…【続きを読む】

【参考文献】

Estimating the life expectancy of companion dogs in Japan using pet cemetery data. Vet Med Sci. 2018 Jul 18;80(7):1153-1158.

Longevity and mortality in Kennel Club registered dog breeds in the UK in 2014.Canine Genet Epidemiol. 2018 Oct 17;5:10.