プロの探知犬並みにノーズワークをこなせる犬の資質

文:藤田りか子

[Photo by marycollins5]

ガンドッグとしては失格だったけど…

筆者の知人でガンドッグスポーツの愛好家、Gさんはなんどもトライアル優勝を果たしたスキルあるハンドラーである。しかし彼女のフィールド系ラブラドール・レトリーバーの一頭であるジャガーに関しては、どうもうまくいかなかったようだ。3歳にもなるというのに、教えても教えても回収を真面目に行わなかった。スウェーデンでは子供が悪さすると

「お母さんのいうこと聞かないと、いつかお巡りさんに連れて行かれてしまいますよ」

とおどすそうだが、Gさんはそれをジャガーによく冗談で言っていたものだ。数ヶ月ぶりに彼女にあったとき

「ジャガーは本当にお巡りさんに連れて行かれました」

と半分悲しそうに、でも半分笑いながらそう言った。悪いことをしたからではない、なんと、ジャガーは犯罪捜査の警察犬として引き抜かれたというのだ。才能がガンドッグとしてどうしても開花せず、Gさんはジャガーに別の生き方ができるよう、彼を活用してくれる人を探した。ほどなくストックホルム警察のK9部署のハンドラーが彼のことを聞きつけて、ぜひと連絡をしてきた。そして半年間のハードなトレーニング後、死体、血液、精液を難しい環境下でも探し当てられる立派な探知犬にジャガーは育った。

優秀な探知犬というのは必ずしもドッグスポーツにおける優等生である必要はないのだな、とこんな話を聞くたびによく思う。とはいえ、どんな犬でもプロ級の探知犬になれるわけではない。「理想的な探知犬となりうる犬の特性とは」について、オーストラリアのビクトリア動物園、野生動物保護調査プロジェクトにかかわる生物学博士のラトーヤ・J・ジェイミーソンさんらが論文を出している。そこにいくつか興味深い記載があったので、今回はそれをもとにプロ探知犬であるための資質について記したい。ドッグスポーツとしての嗅覚作業に関わる人にとってもすごく参考になるので、ぜひノーズワークファンの皆さんも読み進めていただければと思う。

ところでこんな論文を発表したラトーヤさんご自身も探知犬ハンドラー。犬を使い絶滅に瀕した野生動物の生態調査を行っている。ラトーヤさんが2年前に野生動物探知犬として保護施設からリクルートした14ヶ月のオス犬モスも実はジャガーと同じような境遇のラブラドール・レトリーバーだ。いずれも、手に負えないと一旦は飼い主に見放された犬であるのが興味深い。そして彼らには探知犬として共通した素質というものがあるはずだ。

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