ジャーマン・シェパードの先天性巨大食道症、遺伝的原因が明らかになる

文:尾形聡子


[Photo by mostafa meraji on Unsplash]

巨大食道症は食物を胃に運ぶための収縮運動(ぜん動)機能が低下し、食道が拡張する病気です。食べたものを吐き戻すことを主症状としますが、そのため、十分な栄養を吸収できずに体重が減少したり、吐いた食べ物が気管や肺に入って誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)にかかることがあります。

犬の食道は地面に対して水平方向にあるので、人のように重力を利用して食べ物を胃に運ぶことができません。そのため巨大食道症に罹った犬は、立ち姿勢でご飯を食べられるような椅子を使う、少量でも高カロリーの食べ物を回数を分けて与える、食べやすく嘔吐しにくい形状のものを与えるなどの、食事の管理をつづける必要があります。

巨大食道症には先天性と後天性のタイプがあり、後天性は二次性(重症筋無力症やアジソン病、甲状腺機能低下など、ほかの病気が原因となる)と原因がわからない特発性とに分類されます。

先天性巨大食道症の発症原因ははっきりしていないものの、ミニチュア・シュナウザーやワイヤー・フォックス・テリアでは遺伝性が確認されています。ほかにもジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリーバー、グレート・デーン、ダックスフンドなどでの発症が多く、家族性発症も見られることから、遺伝的な素因があると考えられています。先天性巨大食道症は離乳期のころから吐き戻しをするようになり、成長の遅れが見られます。誤嚥性肺炎を繰り返すような場合には安楽死を余儀なくされる場合もある一方で、1歳までに20〜46%が自然治癒するという報告もあり、神経発達の遅れが原因とも考えられています。

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