日本語?英語?犬は言語の違いを区別できる?

文:尾形聡子


[photo by Tony Alter]

犬は人の発するジェスチャーや言葉を見たり聞いたりするだけでなく、においまでをも嗅ぎ取って人とコミュニケーションをはかろうとすることのできる生き物です。同種間でのボーカルコミュニケーションやボディランゲージによるコミュニケーションは広くみられるものですが、これほどまでに人と相互作用がとれる生物は犬をもってほかに存在しないと言えるでしょう。

つい先日、人とコミュニケーションをとるためのひとつの手がかりとしての「単語や短いフレーズ」を、犬がどれくらい知っているかについて調べた研究を紹介しましたが(「犬が知っている言葉の平均個数はいくつ?」参照)、人と一緒に仕事をする作業犬だけでなく一般の家庭犬も同様に、何十から何百もの単語を理解し、それに対して正しく反応する能力を持っていることが示されています。

この事実について私たちはつい「犬なら当たり前でしょ」と思ってしまいがちですが、他の生物種と比較して考えれば「犬だからこそできるんだ!」になり、やはりそれは驚きに値する能力であるのと同時に、その能力に私たちは大きな恩恵を受けていることにあらためて気づかされるものです。

そして、犬が持つさまざまな社会的認知能力が研究により明らかにされている昨今、またもや犬の持つ能力がひとつ新たに明らかにされました。

事の発端は、ひとりのメキシコ人女性が、犬の認知行動学研究で世界的に有名なハンガリーのエトベシュ大学にポスドク(博士課程修了後の研究職ポジション)として渡ったことでした。彼女はメキシコで一緒に暮らしていた犬をハンガリーに連れて行ったのです。そこで彼女は、スペイン語しか聞いたことがなかったボーダー・コリーの愛犬が、ハンガリー語というまったく違う言語を周囲の人々が使っていることに気づいているのかしら?と疑問に感じます。

その疑問を解き明かすべく研究を進めると、犬は話をしている音声(自然な言語音)か、

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