文:尾形聡子
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犬の皮膚炎、中でも通常3歳くらいまでに発症するアレルギー性のアトピー性皮膚炎を患う犬は、世界的に増加傾向にあります。有病率の増加のみならず、慢性的なかゆみが続くことで犬の生活の質を大きく低下させてしまう可能性の高い疾患であるゆえに、病因の解明が急がれています。
日本においても、ペット保険のアニコム発行の「家庭どうぶつ白書2020」で、犬の保険金の請求割合のもっとも多い消化器疾患(25.9%)に僅差で皮膚疾患(25.3%)が続いていることが示されています。皮膚疾患の中のアトピー性皮膚炎の割合はわかりませんが、近年犬が皮膚病にかかりやすいだけでなく、定期的に通院が必要なために保険請求も多くなっているのではないかと思います。
これまでの犬のアトピー性皮膚炎に関する研究では、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアや柴犬などがかかりやすいなど犬種による違いがあること、オスよりもメスがかかりやすいこと、母犬がアトピーである、被毛の半分以上が白毛の場合などが発症リスクを高めることが分かっており、遺伝的要因と発症とに因果関係があることが示されています。
このように犬のアトピー性皮膚炎は遺伝的要因が発症リスクに関与しますが、それだけでなく、人や他の動物と同様に、環境要因、とくに幼少期の食べ物の影響が免疫系の発達やその後のアレルギー反応への感受性に対して生涯にわたって影響を及ぼすと考えられています。
「アトピー性皮膚炎と食餌の関係、生食それともドライフード?」で紹介したフィンランドのヘルシンキ大学の研究においては、子犬時代の食餌のタイプ(生食かドライフードか)や日光浴の時間、正常な体重管理、生まれた場所でそのまま育つ、妊娠中の母犬の駆虫などの環境要因も、発症率と関連していることが示されています。
中でも、子犬時代の食餌のタイプがアトピー性皮膚炎の有病率と強く関連し、生食ベースの食餌のほうが発症リスクを