文:尾形聡子
[photo by State Farm] アラスカン・マラミュート。
犬は哺乳類の中でも多種多様な見た目を持つ生物です。犬のバラエティ豊かな姿形を作り出しているもののひとつが毛色とそのパターン。現在、犬の毛色とパターンに関係している、または関係すると考えられている遺伝子は、同定されていないものも含めて15を超えるまでになりました。
さらに、既知の遺伝子座において新たなバリアントが見つかったり、「例外」とされていたような現象も徐々に解明されつつあります。先日お伝えしたA遺伝子座におけるプロモーター領域のバリアントにより、これまでよりもさらに細かく毛色を区分できることが示されたのもその一例です。
数ある毛色遺伝子の中で体の基本色の決定に関わる遺伝子は3つ、A遺伝子座、E遺伝子座、K遺伝子座です。これらの遺伝子座の遺伝子型がどのようになっているかにより、毛色を作る2種類のメラニン、ユーメラニン(黒〜茶褐色)とフェオメラニン(赤〜黄褐色)の基本的な生成メカニズムが決定されます。それらに対して、白斑を作ったりメラニンに濃淡をつけたりする遺伝子が働き、最終的に私たちが見ることのできる毛色やパターンとしてそれぞれの犬の体を覆うことになります。
さて、今回は先日のA遺伝子座の話に続き、E遺伝子座の最新研究を紹介したいと思います。いずれも体の基本色決定に関与する遺伝子座になりますが、本題に入る前にA、E、K遺伝子座の関係について簡単に解説をしておきます。
毛色遺伝子の中での優劣と、他の毛色遺伝子との関係性
犬の毛色はメラニン色素が毛に沈着することで色として目に見える形になります。そのメラニンを作る過程に関わる遺伝子、もしくは、メラニン細胞そのものの分化や維持に関わる遺伝子が、いわゆる「毛色遺伝子」と呼ばれるものです。
それぞれの毛色遺伝子には