文:尾形聡子
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子犬も赤ちゃんも成長していく中で、少しずつ社会的認知能力を発達させていきます。これまでの研究から、犬には指差しや視線の追従、他者の模倣、社会的参照、自己認識、協働行動能力などが備わっていることが示されてきていますが、そのような能力のひとつに「行動同期(behavioral synchronization)」と呼ばれるものがあります。
行動の同期とは?
行動同期とは、2個体以上の個体が身体的な行動を同期させることです。グループ内での無意識的な行動同期はさまざまな生物種において観察され、子の被食圧の低下や生殖同期による生存価の向上、エネルギー使用量の減少、グループの社会的結束を強めるなど、その種が存続していくために重要な役割を担っています。それはグループ間だけでなく、二者関係にもみられます。身近なところでは、つがいとなる鳥がいい例でしょう。二者間の行動同期は、お互いの関係や社会的な絆を深めるのに役立ち、社会的行動を促すことが知られています。行動同期はそれぞれの生物の進化を理解するために不可欠で特異的な能力です。
これらの行動同期は基本的に同種内において観察されるもので、異種間でもみられるかどうかについてはほとんど分かっていません。しかし、犬は別で、