文:尾形聡子
[photo by 6SN7]
お化粧をしたり身だしなみを整えたり。人は鏡に映る姿を自己像と認識して日常的に鏡を使っています。人の場合は18か月から2歳くらいまでに鏡に映る自分を見て、それを自己だと認識できるようになることが分かっていますが、人以外の生物も、鏡の中の自分を自己認識することができるのでしょうか?
ミラーテストとは?
動物が鏡像認識をしているかどうかをはかる指標に、ミラーテスト(またはマークテスト)と呼ばれる実験方法があります。ミラーテストの代表的なやり方は、対象となる動物が気づかないように、自分の目で直接見えにくい場所にマーク(口紅や染料など)をつけ、その後に動物の姿を鏡に映します。鏡に映った姿を見たときにそれを自分だと認識していれば、自分の体の上についているマーク部分を直接気にするといった行動をとりますが、認識していない場合には何も気にしないか、鏡に映し出された自己像を自分とは別の個体として注目するなどの社会的行動をとったりします。
これまでにミラーテストを用いて、チンパンジーをはじめとした大型類人猿やイルカ、ゾウ、鳥類のカササギがこのテストをクリアし、鏡像認識をしていることが示されています。しかし、われらが友である犬たちは、ときに大型類人猿を上回る高い認知能力や問題解決能力を持つことが科学的に証明されているにもかかわらず、このミラーテストでは落第をしていました。鏡にうつりこむ別の誰かを見ることはあっても、体についたマークは気にしないからです。
犬は嗅覚の世界の生き物、だからこそ“嗅覚”ミラーテストを
「嗅覚の世界の住人ともいえる犬には、視覚的な手がかりではなく、嗅覚的な手がかりを使ったミラーテストができないか?」
そう考えたのは、