文:尾形聡子
[photo by Marius Lengwiler]
人の行動の違い、すなわち性格の違いの遺伝的背景を解き明かすための研究が初めて世に出たのは1996年のこと。5つあるドーパミン受容体のひとつ、認知や情動と関連している大脳皮質や大脳辺縁系に多く存在するD4受容体の多型と行動の表現型とに関連性があることが示されました。それからというもの、人に始まりさまざまな生物の全ゲノム配列が決定されていったことも後押しし、性格の遺伝背景に関する研究はますます進められてきました。
もちろんのこと、犬においても行動・性格の遺伝背景を解き明かす研究が行われています。先ほどのD4受容体遺伝子においては、犬でのその多型が人への注視行動に関係していたり、オキシトシン受容体の多型が社交性と関連するなど、人と犬の性格や行動の表現型に共通した遺伝背景が存在していることが少しずつ明らかにされてきています。また、人の精神疾患と似た症状(行動)を遺伝的な原因で犬が発症することがあることも研究により示されてきています。たとえば、ドーベルマンに見られる「脇腹を舐めたり吸ったりする行動」は