文:尾形聡子
[photo from wikipedia]
島という地形はまわりを海に囲まれ大陸から隔絶された環境のため、動植物が独自の進化を遂げたり、特有の固有種が生息していたりする、ユニークな生態系を持つ場所です。ダーウィンが進化論のヒントを得たガラパゴス諸島はとても有名な例でしょう。
そのような島固有の生物はなにも野生動物ばかりではありません。人と暮らす犬にも島の固有種が世界中にたくさん存在しています。身近なところでは私たちの暮らす日本がまさにそう。日本の犬には天然記念物になっている秋田犬や柴犬などの6犬種をはじめ、琉球犬や川上犬など、それぞれが地域の環境に適した犬として生きてきた歴史があります。そして犬種の変遷は人の歴史でも。日本犬は縄文犬(沖縄と北海道)と弥生犬(本州)との2種類をルーツとしていますが、どのようにして人が犬とともに移動したかのを知るための手立てにもなっています。
https://manabi-japan.jp/special-interview/20190907_15184/
さて、先日紹介しましたイタリアのサルデーニャ島のFonni’s Dogも島固有の犬種で、人々とともに大陸から島に移動してきて住み着いた犬種のひとつです。このような犬は島という閉ざされた地域に暮らすため、その中での繁殖がくり返されれば遺伝的多様性を失いやすく、絶滅の危機にさらされやすい状態にあるといえます。これは自然界の生物においても同様にみられる現象で、隔離された環境は生態系が守られることにもつながりますが、一方で絶滅しやすい可能性も高まるのです。
Fonni’s Dogは犬種として確立されているといえる遺伝的バックグラウンドを持っていることが示されましたが、一犬種というには毛質や毛色に関しては実にさまざまです。まるで雑種のようにも見えるいでたちでもあるのですが、もしかしたらそのような特徴があるからこそ絶滅することなく現在も生き続けている犬種かもしれない、と想像を及ばせてしまうようなスペイン発の研究が最近『Research in Veterinary Science』に発表されました。
地中海に浮かぶマヨルカ島の狩猟犬
スペインの東側にあるバレアス諸島最大の島、マヨルカ島。ヨーロッパからの観光客も多く訪れる風光明媚なその島は沖縄本島の3倍ほどの面積があり、島固有のさまざまな野生動物や家畜、植物などが生息しています。その島原産の犬種もいくつかあり、FCI(世界畜犬連盟)で公認されているものにマヨルカ・シェパード・ドッグやマヨルカ・マスティフなどがいますが、FCI公認犬種ではないものの13世紀の書籍に記載がある「Majorcan Ca Mè dog(またはCa Mè Mallorquí)」というポインター系の犬がいます。
何世紀にもわたって島で生き続けてきた犬種とはいえ決して個体数は多くなく、絶滅が危惧されている状況にあります。そこでこの犬種の将来を守ろうと、地元スペインのコルドバ大学の研究者らのチームはMajorcan Ca Mè dog(以下、カ・メ・ドッグと記載します)の遺伝的多様性の現状を家系図をつぶさに調べて解析を行いました。彼らが研究の一環として行っている別の遺伝研究に関しては