文と写真:藤田りか子
スウェーデンの犬の飼い主のほとんどが市販のドライフードに頼っている。生食ですら全栄養タイプで市販のものがある。これらレギュラー・フードにくわえて夕食の残りものなどを犬に与えるのも一般的だ。スウェーデンではとても有名な犬食の栄養士でもあり獣医学博士のマリア・サラマンダーさんは「適度な量ならむしろ人の食事の残りものなどを与えるのは犬に免疫力をつけるためにもよい」と語っていた。
ただし、その中に犬の体によくない野菜や果物などが入っていることもあるから注意をしなければならない。我々の多くが玉ネギなどネギ系の野菜を与えてはいけないのは知っている。だが、その他の野菜・果実についてはどうも知識があやふやになりがちだ。
そんなわけでウェブを検索していたら、スウェーデンの大手動物保険会社であるアグリア動物保険・広報担当のパトリック・オルソンさんの「犬に与える野菜と果物についてのアドバイス」の記事を見つけた。日本の愛犬家のみなさんにとっても参考になると思うので、いくつかかいつまんでシェアをしたい。日本とスウェーデンで、犬に与えてもいい野菜・果物についての見解は、同じものだろうか、それとも微妙に異なる?
気をつけなければならない野菜と果物
玉ねぎ
玉ねぎは生が危ない、と思っている人がいるかもしれないが生のみならず煮ても焼いても乾燥させても、犬に与えるのはNGだ。玉ねぎに含まれるアリシンによって貧血が引き起こされる。もっとも筆者個人の経験では、みじん切り玉ねぎの入ったミートボールやハンバーグを我が家の犬(体重は約30〜40kg)に与えて問題に至ったことはない。First Vetというスウェーデンのオンライン獣医クリニックの説明では体重1kgにつき15〜20gの玉ねぎ、体重1kgにつき5gのにんにくを食べると中毒の危険性があるということだ。となると我が家のようなラブラドール大の犬であれば(体重30kgとして)450gの玉ねぎを食べてしまうと危ないということになる。これは中玉の玉ねぎ二つ分の量!さすが数個のミートボールにそれほどの量の玉ねぎは入っているはずもなく。ただし長期にわたって与えるのはたとえ少量でも危ないとも警告。一方で3kgのチワワであれば、45gの玉ねぎ(つまり小玉サイズの玉ねぎ半分以下の量)でリスク状態になる。小型犬飼い主は注意が必要だ。
それから日本では見かけないかもしれないが、玉ねぎフレーク(乾燥させた玉ねぎ)であれば、乾燥しているために成分が凝縮している。故に少量でも中毒症状を起こすリスクあり。
核果
桃や杏、さくらんぼ、プラムといった大きな種がはいったフルーツを核果という。このタイプのフルーツにも気をつけたし。果肉自体は問題ないが、中に入っている大きな種が危ないのだ。種にはアミグダリンという物質が含まれている。消化の際に毒性のある青酸化水素が発生する。症状は、気持ち悪さ、嘔吐、呼吸困難など。食べて数時間後にあらわれる。そして誤飲にも要注意。腸閉塞を起こす可能性あり。
アボカド
少しの量であればアボカドの果肉は問題なしとスウェーデンでは言われている。ただし日本の多くのサイトでは危ないという警告をしている。そして、こちらも中に入っている大きな種に気をつけたい。誤飲要注意。腸閉塞を起こす可能性あり。
ブドウ、レーズン
すべての犬がブドウ・レーズンを食べて中毒を起こすわけではない。が、急性腎不全を起こす危険があるのでこちらも絶対に食べさせない方がよし!なぜ個体によってブドウに過度に反応してしまうのかその理由はまだわかっていないそうだ。
トウモロコシの芯
スウェーデンではトウモロコシの芯を犬が誤飲して獣医に運ばれるケースが多い。それはおそらく家庭でのBBQが盛んだからだと思う。焼きトウモロコシはBBQでよく登場するメニュー。食べた後に芯を庭に不用意にもポーンと投げ捨て、犬がそれを拾って食べてしまうためと思われる。日本でもキャンプ場でBBQする機会が増えているので注意が必要。芯は危ないが、コーンの実の方は犬が食べても大丈夫。
トマト
犬メシに含まれる素材だが、実は犬はトマトをあまり上手に消化しない。なので与えるとしたら少量にとどめるよう。そして与えるのであればよく熟れたトマトを。青いトマトにはトマチン(アルカロイド配糖体、ジャガイモの芽や緑色になった部分に含まれているソラニンと同じタイプの物質)という毒物が含まれているからだ。
犬の体に良い野菜と果物
ブルーベリー
北欧には森にブリーベリーがあちこちに自生している。犬たちは森を散歩すると歩きながら食べているぐらいだ。かといって大量に食べさせていいものではないのだが。
犬はベリー系の果物が大好き。野生のラズベリーを食べるラッコ。
ブロッコリー
スウェーデンにはブロッコリーを煮て犬に与える人がたまにいる。満腹感が得られるからダイエット中の犬にはぴったりだ。生のブロッコリーもOKだが、ガスをためやすくなる。ブロッコリーについてはこちらの記事も参照に。
キャベツ
β-カロテン、ビタミンC、ビタミンK、マグネシウム、カルシウムに富む。与える場合は小さく切るか、あるいは圧力鍋で一度調理を。
ニンジン
ニンジンもβ-カロテンをたくさん含む。スウェーデンでは犬の「暇つぶし」作戦にもよく使われている野菜。ガリガリと何かを齧りたい犬にはぴったりのおやつ。大型犬であれば、そのまま一本与えて齧る喜びに浸ってもらおう。あるいは、すり下ろして生で与えるのもよし。
カボチャ
繊維、β-カロテンとビタミンCに富む。ただし丸ごと与えないようにね(そういう人はいないと思うけど)。カボチャの種については、スウェーデンでは取り除くようにと記されているが、アメリカの犬雑誌BARKの記事では、カリウム、マグネシウム、カルシウムの栄養源として、与えることを推奨している。ただしローストするか乾燥させて粉々にするべしとも記されている。
ジャガイモ
茹でたジャガイモはスウェーデンでは日本のお米にあたるほど主要食。よって多くの犬が食べている。しかし生ジャガイモは与えぬよう。
アスパラガス
[Photo by Livin’ Spoonful]
犬への食材としてあまり聞かず、与えてもいいのかどうか迷う人も多いだろう。ビタミンA B1、C、E、K、鉄分、マグネシウム、繊維が豊富。加熱して細かく切って与えよう。さて、日本ではあまり語られることはないのだが、スウェーデンでは犬が何か鋭いものを(たとえば陶器の破片など)誤飲した際の応急処置として生アスパラガスを一本与えるといいというアドバイスをよく聞く。たとえばスウェーデンの獣医クリニックの大手であるAnicuraのウェブサイトには「アスパラガスの長い繊維が異物を包み込むので、腸を傷つけることなく自然に体の外に出してくれる」と記されている。知人のジャックラッセルテリアの飼い主Aさんによると、彼女の犬はなんとBBQの串を飲み込んでしまったそうだ。すかさずアスパラガスを与えたそうだが、串のような長い物体だったので対処できなかったとも。というわけでアスパラガスが有効なのは、あくまでも小さな異物に限られるようだ。
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