文:藤田りか子
譲渡先が北欧の国に決まったあるルーマニアの保護犬。[Photo by Giusi Barbiani]
北欧では外国から保護犬を受け入れる人が少なくない。野犬はゼロだし犬を野山に遺棄する人もほとんどいない。国内の保護施設にも「望まれない犬」が溢れかえっているわけではない。だから人々にはよその国の保護犬を受け入れる余裕がある。
ヨーロッパには東欧諸国、南欧諸国およびアイルランドの保護犬・野良犬譲渡を国外に向けて斡旋しているサポート機関が数十ほど存在する。たとえばルーマニアの保護犬を助けたい、と思えば、ルーマニアとつながっているサポート機関のウェブサイトに入りネットで申し込むことができる。これら簡易な仕組みも手伝い、スウェーデンには年間3500頭、隣国フィンランドには年間2500頭もの犬がロシアや他のEU諸国からはいってきている。スウェーデンについては、もっとも多いのがアイルランドから。そしてルーマニア、スペインが続く。フィンランドは、ロシア、スペイン、ルーマニア。犬は北欧の保護施設に預けられるのではなく、輸入と同時にすぐさま個人の手に渡る。
これら外国から入ってくる犬のほとんど[1]は、現地の自治体あるいは個人で運営されているシェルターからの保護犬、またはパピーミルで「生産」された子犬たちだ。現地の劣悪の環境から救われ、スウェーデンのような動物ウェルフェアの先進国で生涯を過ごすことになるのだから犬にとっては喜ばしい。だが外国の保護犬が増えるにつれ、スウェーデンでは同時にそれが社会的な問題になりつつある。
ルーマニアにおけるシェルターの様子。[Photo by Animal People Forum]