愛は盲目?苦痛に盲目?短頭種をとりまく現実のパラドックス

文:尾形聡子


[photo by Kristin Shoemaker]

短頭種の人気ぶりは日本のみならず、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなど世界各国でみられる状況です。中でもとりわけ人気なのが小型の短頭種。

短頭種の多くは愛玩犬で、丸い顔・大きな目・小さな鼻・小さな体などの独特な見た目が人々の心をよりいっそう惹きつけています。そもそも人はこのような特徴にたいして「かわいい」と感じる生き物なのです。動物行動学者のローレンツ博士は、それを幼児図式(Baby Schema)と呼びました。幼児図式とは養育行動をとる親(大人)が、養育されることを必要とする幼体を本能的に「かわいい」と感じさせ、そこから養育行動が引き起こされるという考えです。

幼児図式は養育の必要がある子犬に備わっているのはもちろん、短頭種の場合では「かわいい」特徴の多くを成犬になっても持ち続けています。実際、これまでの研究では短頭種の見た目の特徴が人々に「かわいい」と感じさせていることも示されています。

しかし人気の一方で懸念されているのが、短頭種が抱えている、短頭種ならではの健康問題です。2017年に発表されたデンマークからの研究では、健康面での懸念が高い短頭種を選ぶ理由を知るために、フレンチ・ブルドッグ、チワワ、キャバリア、ケアーン・テリア(ケアーン・テリアは遺伝病が少ない健全な対照としての調査対象)の4犬種の飼い主にアンケート調査を行っています。

そこでは短頭種が多くの健康問題を抱えていたとしても、

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