ラブを太りやすくさせる遺伝子変異が明らかに

文:尾形聡子(本記事はdog actuallyにて2016年5月19日に初出したものを一部修正して公開しています)

[photo by Eselsmann TM]

“ラブは食いしん坊だからね、どうしても太りやすくって・・・”

こんなセリフ、愛犬家の方ならば必ずどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。とにかく食べられる物ならなんでも好き!という、とどまるところを知らない食欲を持つ犬種として広く印象を持たれているラブラドール・レトリーバー。動物病院に訪れるラブラドールに肥満個体が多いと感じていたことをきっかけに、英国ケンブリッジ大学の研究者らはラブの食べ物への欲求の高さや肥満に遺伝的な原因があるのではないかと考え、研究を始めたところ、その背景にはひとつの遺伝子変異が大きくかかわっているだろうことが示されました。

Cell Metabolism』に発表された研究によりますと、研究者らは最初に、肥満のラブ15頭、痩せているラブ18頭を対象にDNA解析をし、比較を行いました。すると肥満に関連する3つの遺伝子に違いがあり、その中でも POMC(プロオピオメラノコルチン)という遺伝子に起きていた14塩基欠失の突然変異が着目されました。なぜならPOMCが突然変異を起こしていることで、食欲のスイッチを切るβ-MSHとβ-エンドルフィンの産生を阻んでしまうからです。つまり、β-MSHとβ-エンドルフィンが作られないと、食べても食べても食欲が止まらない、という状態になりやすいということです。

このPOMC遺伝子のバリエーションは、人でも体重の重さと関連していることが知られていますが、肥満の人の中に今回ラブで発見されたのと同様の遺伝子の一部を欠失しているケースがあることもわかっているそうです。

続いて310頭のラブラドールを対象に POMC遺伝子の変異を調査したところ、およそ4分の1に POMC遺伝子に変異が見られ、さらに対象を広げて合計700頭以上のラブラドールについて調べた結果、およそ23%のラブが POMC遺伝子の変異型を持っていることが明らかになりました。遺伝子変異を持つ個体すべてが肥満ではなく、肥満でもPOMC遺伝子に変異が見られない個体もいたものの、総じて、POMC遺伝子に欠失が見られる個体は肥満との関連性があり、平均2キロ体重が重いことが示されました。そして飼い主への調査によると、POMC 突然変異を持つ犬たちは、食べ物をねだったり残り物をあさる傾向が高かったそうです。

また、ラブラドール以外の38犬種で POMC遺伝子を調べたところ、フラット・コーテッド・レトリーバーにだけ遺伝子変異が見られ、その個体はラブラドールと同じく肥満で食欲も強い傾向にあることが分かりました。

さらに特徴として見られたのが、研究対象に含まれていた補助犬のラブラドール81頭のうちの76%が POMC遺伝子変異を持っていたことだそうです。この結果については研究者らも想定していなかったそうですが、理由としては、歴史的に食べ物を報酬としてトレーニングを行っている補助犬育成プログラムにおいて、おやつで動機づけされやすい犬のほうがより補助犬候補として選ばれやすかったことが考えられるとしています。しかし今回の調査のみでは補助犬との関連性が示されたとは言えず、たまたまでた結果である可能性は捨てきれないとも言っています。

この突然変異を持つ犬の行動は他と異なる、という研究者。ラブの飼い主の方々は、このような”太りやすい”体質を作る遺伝的な背景があるのを知っておくことも大切と思います。ラブに限らず、おやつやご飯をねだる愛犬を見て、ついつい与えすぎてしまうこともあるかもしれませんが、肥満は万病のもと。健康を維持していくために、適切な体重を管理していきたいですね。

【参考サイト】
Cell Metabolism
EurekAlert!