犬の食事を生食に切り替えた、の話

文と写真:藤田りか子

犬はよく食べ、よく動いて。犬の幸せについて語りたい。【Photo by Jan Truter」

最近、とは言っても、ここ半年になるのだが(2019年現時点からはもう4年前のことになる)、我が愛犬ラッコの食事スタイルを変えた。今まで彼はドライフードを食べていた。しかしある時を境に、軟便ばかりするようになってしまった。ドライフードに入っている穀類にどうも反応し始めたようなのだ。よくある話である。もしかして、ドライフードの会社がレシピをこっそりと変えてしまったのかもしれない。獣医さんに電話をして聞いたら、元気であればそれほど問題はない、少し様子を見ろ、と言うのでそのまま日々を過ごしていた。その間、試しに友人に勧められた生食(なましょく)のレシピを何日間か与えてみた。と、しばらくしてウンチはコロコロのいい具合に戻った。この時から、ドライフードのみというラッコの食生活は、一気に大チェンジ!ちなみにスウェーデンの飼い主は、ほとんどがドライフード派であるが、最近生食派も徐々に増えている。

注:私はフードの専門家ではないので、ここでは生食についてのレシピを云々する気はない。それから、ここで生食のプロモーションを行う意図もないことを了承してほしい。あくまでも私の体験談としてみなさん、読み進めてくださいね。

愛犬のために食べ物を自分で用意する、ということに一旦はまりだすと、これ、意外に楽しくて、のめり込んでしまう。それこそ、何も知らない頃は、肉を与えていればいいのだろう、ぐらいにしか思っていなかったが、それは大きな間違い。重要なのは、犬に必要な様々な栄養をバランスよく盛り込んで与えること。だから素人がいい加減な気持ちでできないものでもある。

その大事さがわかるにつれて、いよいよ神経質になり自分が何を与えているのか確かめるために、「犬の栄養」という1日コースも取った。これは、もともと、犬のブリーダーのためにケネルクラブが主催しているコースなのだが、普通の飼い主もウェルカム。講師は、スウェーデンではこの世界の大御所とも呼ばれるマリー・サランダーさん。獣医学博士であり、スウェーデンの多くのドッグ&キャット・フード会社の栄養コンサルタントを行っている。大学在籍時代には、犬、猫における糖尿病とその食事についてなど、病気と食事にまつわる研究を多く行った。

知れば知るほど、よく犬雑誌などにカラフルな写真と共に載せられている「手作り食」は、本当に栄養バランスを考えて作られているのだろうか、と少し懐疑的すらなった。というのもあまり栄養についての情報が記されていないからだ。タンバク質がどのくらいの比率で入っているのだろう?カルシウムは?リンは?

【photo by Marco Verch

マリーさんの講義で一つ一つの栄養(タンパク質、脂質、ミネラルなどなど)について駆け足だがざっと学び、家に戻ってどうやって肉やミネラルを配合しようか、と、しばらく奮闘していた。スウェーデンには、他のヨーロッパ国のようにブッチャー(肉屋)がない。肉を得る唯一の手段は、スーパーにあるパッキングされたものを買うこと。人が食べない部位を、直接安く売ってもらえる、というのは、と殺所に友人でもいない限りなかなか可能ではない。

一方で、イギリスの、とある友人は愛犬のために、チキンやラム(子羊)の肋骨や脚の骨、さらに腸などを大量に肉屋から仕入れて与えていた。それを羨ましいと思ったものだ。ただし、その肉屋のおじさんはレーシング用のグレーハウンドをブリーディングしている人で、自分の犬にはアメリカ製の有名なドライフードを買って与えていたそうだ。皮肉である。…と、話は逸れてしまったが、やっとアジア系のスーパーにスウェーデン人にとっては「ゲテモノ」となる部位を見つけ(腸や心臓、腎臓、頭部など)、それを買い占めた。

ただし今は、内臓系の肉探し奮闘に疲れて、市販の犬用生食と生のチキンを混ぜることで落ち着いた。一時、生食が失敗したのか、それとも別に原因があったのかは分からないが、ラッコは体重を落としていた(これもよくある話)。が、栄養バランスの取れている市販の生食に変えて、ちょうど良い体型に戻った。ちなみに前出のマリーさんは、生食とドライフード、どっちがいいとは言い切れない、と述べていた。現に、ドライフードのみで、健康に生きている犬はこの世に何千万頭といるわけだから、たしかにそれはそうなのだろう。ただし、フードに関しては、特にブリーダーはそれぞれの意見を持っており、ほとんど宗教。絶対に皆、意見を譲らないし、かなりタッチー(微妙な)な話題でもある。

私が生食信仰に入ったのは、前にも述べたようにラッコのお腹の加減、が主な理由だ。それから、たまたまなのかもしれないが、幾人かの友人の犬たちが13歳以上にもなるのに、走って、遊んでとても元気。聞けば、生食を与えていた、という(もちろん、その前に普段、十分な運動も与えられ、骨と筋肉は鍛えられている)。私の犬もそうなってほしい、というのが動機にもなっている。この後、ラッコの食生活はどう変わるか、わからないが、しばらくこれで様子を見ようと思う。

この大きなトラックが毎月うちの近くにやってきて、冷凍生食を売りに来る。十キロ単位で幾つか買うのだ。

ところで、市販の生食もピンキリで、本当に栄養バランスが取れているのか、怪しい。それなりに実績のあるところで求めるのが一番安全だとマリーさんは話してくれた。兎にも角にも、市販のものに切り替えたのは、本当に良かった。メーカーが直接、冷凍トラックで、一ヶ月に一回、うちの近くにやってくる。この会社、スウェーデン中を津々浦々巡り、生食を売っている。そこで10キロ単位でいくつものパッケージを買う。犬用に冷凍庫を買うはめになったが、安い肉を探しに奔走することがなくなった。

そう、奔走している間に、実は少々馬鹿らしく思えたことも白状しよう。食事も大事だが、これに気持ちをとらわれすぎて犬にとってもっと大事なこと、運動させる時間がおろそかになる日もあったからだ。犬にとっての一番のメンタルのご馳走、運動やアクティビティ、そして楽しいトレーニング。犬は好奇心の強い動物。その好奇心を満たす、というのを、実は一番優先させなければいけないのに。食事に凝り出すのはとっかかりやすいが、それだけで犬に愛を与えているなんて思ってはいけない。ぜひとも、犬と付き合う上で大事な部分を忘れないようにしたいもの。食事とアクティビティ。この二つは、犬の幸せのために、等しく十分に与えられなければならないものだろう。

犬の栄養についてもっとじっくり知りたい方はアルシャー京子さんが多くの栄養学についてのブログを犬曰くで発表しているので、こちらのリスト(アルシャー京子さんのブログリスト)を参考にされたい。

アルシャー京子ブログ | 犬曰く
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(本記事はdog actuallyにて2016年6月22日に初出したものを一部修正して公開しています)

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