犬好きの定義による「イギリス」

文と写真:藤田りか子

[Photo byStuart Crawford

このご時世だと、海外旅行もままならないけれど、犬好きにとってのイギリスの話をしたい。ちなみに犬好きにとっての英国ハイライトであるクラフト展は、コロナ感染の懸念にもかかわらず今年2020年も3月5〜8日にわたって開催された。ただしやはりというか、例年より観客は少なかった。それでもクラフトファンにとっては運がよかったのかもしれない。もし開催が今の時期に予定されていたら、おそらく中止か延期になっていただろう。

だがイギリスの「犬文化」を味わうには、なにもショーのような人混みの中に行く必要はない。というのも、イギリスは実はどこにいっても犬に溢れていて、そのどれをとっても非常にブリッティッシュだからだ。

オックスフォード近くのコッツウォルズ地方を訪れたことがある。そこは町並みにしても、カントリーサイドにしても、もっともイギリスらしさが残されている場所だ。昔牧畜の市場で栄えたという小さな町に来た。三角屋根の石造りのちいさなコテージが道に沿って広場をぐるりと囲んで並ぶ。昔のまま残されているそうだが、その1つのB&Bで朝食。焼いたトマトにソーセージ、そしていり卵という、イングリッシュ・ブレックファーストの定番がテーブルに出された。ふと窓に目をやると、そこから見える景色もイギリス情緒そのものであった。

ジャックラッセルが走っていた。栗の木の根元をにおうと、さっと脚をあげて朝の用足し。3秒おくれておじいちゃんが後ろからやって来た。次に元気よく現れたのは、黒いラブラドール。よく肥えている。おばちゃんが連れていた。その後立て続けに出てきたのは、リードなしで走るボサボサのウェスティと赤茶の斑を持つスパニエル。スパニエルはお兄さんがリードでひいていた。そして、最後にはボーダーコリーも。これはB&Bで飼われている犬だ。これ以上、イギリスらしいイギリス風景もないだろう。「As British as you can get…」

イギリスをイギリスたらしめているもの、ベスト5を挙げろといわれれば、迷わずこれらを選ぶ。

  1. テリア
  2. レトリーバー
  3. スパニエル
  4. ボーダーコリー

そしてナンバー5にパブと付け足したい。

犬好きのイギリス旅行者にとって、スコーンのおいしいティールームよりもやっぱりパブがいい。パブに入れば、生ぬるいエールをちびちびやっているオヤジさんの足元にはたいてい犬が寝そべっているものだ。ちなみにパブ出没犬の定番はテリアである。

テリア

パブとくればテリア!生ぬるいエールをちびちびやっているオヤジさんの足元に。しかし、最近のイギリスではパブの犬連れは規制され始めている。[Photo by Underway In Ireland]

とにかく、どこにでもいる。パブはもとより、駅、ショッピングモール、住宅地、羊の牧草地に来ても、テリア、テリア、テリア。多くはボサボサ毛のジャックラッセルかボーダーテリア、あるいはその交雑かそれもどき。

イギリスで発達した農場の使役犬。ニッチとしては、日本の柴犬に相当する。手ごろなサイズ、番犬としてもよし。害獣退治に活躍した歴史を持つ。今も、田舎の農場ではねずみ、うさぎ退治の立派な猟犬。

テリアのおどろくべきネズミ退治シーンを実際に見てみたい方はこちらのブログもどうぞ!

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レトリーバー&スパニエル

休日、犬を川べりに連れ出して水遊び。犬はイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのフィールドタイプ。お父さんはキジ猟にもつかっているのだとか

レトリーバーは純血種の家庭犬としては一番ポピュラー。スパニエルは断尾された尾をピョコピョコと忙しくふりながら、町を楽しく闊歩している。今でこそ、家庭犬の代表種だが、この2タイプの犬はイギリスの歴史的犬作りの傑作でもある。猟犬として性能のいい犬を作っているうちにできあがった。性能がいいということは人とのコンタクトがいいということ。だから現在家庭犬としてもよく機能するのだ。

ボーダーコリー

地元では単にコリーと呼んでいる。羊がいない都市部でもよく見かける。運動と頭脳アクティビティが必要な犬だから、家庭犬として飼いきれなくなり、シェルターに入るのはけっこうイギリスでは「よくある」ストーリー。悲しいことだが、動物愛護の国ですらあまりよく考えないで犬を飼う人はいる。

犬好きによるイギリスの定義は果てしなく続くのだが(たとえばカントリーフェアとか)、今回はここまでとしておこう。