塩分と犬

文と写真:アルシャー京子

太古の昔、生物は海から生まれたという。塩との関係は生き物にとって切っても切れない深い関係にあるのだ。

犬にとって塩分とは本当に悪者か?これが今回のテーマ。

犬は人間と違って汗を掻く部分が少ないことから、塩分をほとんど必要としないといわれてきた。「食餌中の塩分はご法度!!」と犬好きでなくても言っていた。

本当にそうなのだろうか?

実は塩分を構成するナトリウムと塩素とは細胞レベルでとても大事な役目を果たす。これらが不足すると細胞はバランスを崩し形を保ってゆけない。

ヒトほど必要としないけど絶対必要な成分、それが塩である。

さて愛犬が毎日どのくらいの塩分を摂取しているか、まずは愛犬の食餌に含まれるナトリウム量をみてみよう。

ドッグフードの場合、含まれるナトリウムの量は残念ながらペットフード公正取引協議会の表示規則にはなく、大手メーカーの製品では自主的に表示されている一方で、弱小メーカーではあまり表示がなく注意が必要となる。

手作り食の場合は自分で計算して出すしかない。

数字で見てみると、犬の体に理想とされる一日のナトリウム摂取量は体重1kgあたり50mgで、体重10kgの犬では500mg。これを塩分に換算すると1.27gが体重10kgにおいて適当量となる。

例えば体重5kgのダックスフントに当てはめると、理想のナトリウム摂取量は250mg。これはウィンナー2本弱、プロセスチーズではたった30gのナトリウム量に相当する。もしも必要充分な塩分が含まれているドライフードを主食としていて、さらに食卓のおこぼれを犬に与えるならば、ヒトの食事には大量の塩分が含まれているため、すぐにでも塩分は過剰になってしまう。

ナトリウムを過剰に摂ると出る症状は一時的な高血圧、多飲、心臓・腎臓障害、皮膚の痒みなどである。

犬に塩って、なんとなく避けて通っていなかった?愛犬に土を舐める癖などがある場合には要注意。

さて、愛犬の塩分の摂りすぎは多くの飼い主が気をつけているだけでなく、自然派フードではご丁寧にも「塩分無添加」のものが多い。そこで果たして塩分の供給が充分足りているかどうかを気にしている飼い主はどれだけいるだろう?

もう一度言おう。塩分は体の中の浸透圧を保つ極めて大事な成分だから、食餌には必要充分に含まれていないと困るのだ。

ドッグフード派はパッケージをみて、もしくは記載のない場合はメーカーに問い合わせ、給仕量あたりの含有量と愛犬に必要なナトリウム量または塩分量とを比べれば良い。

しかし手作り食派の場合はそれぞれの食材に含まれるナトリウム量を参考にするしかないので、この際「食品成分表」とにらめっこし、電卓を片手に計算してみるのがいいだろう。

犬の食材のうち比較的多めのナトリウムが含まれているのはタンパク質源である肉や海魚など。肉類>マイワシ>シシャモの順にナトリウム量は多くなる。野菜や穀類には本来ほとんどナトリウムは含まれないが、これがひとたび加工されたうどんやパンになると含まれるナトリウム量はマイワシ並に多くなる。

例えば体重5kgのダックス向けの食餌として、鶏胸肉60g+ご飯100g+野菜(人参・かぼちゃなど)30gの献立だと、ナトリウムは必要量の5分の一も満たさないことになる。しかしここに昆布などをうまく利用すればナトリウムだけでなく微量ミネラルも一緒に摂れ、食餌のバランスはぐっと改善されるのだ。

ナトリウムが不足すると出る症状は、倦怠感、食欲不振、落ち着きがない、どこでも舐め回す、嚥下障害、乾燥した皮膚、血量低下、嘔吐、体重減少、成長遅延、脱毛など。

毎日の食餌中の塩分不足以外に、特に塩分が不足気味となる場面とは、下痢や嘔吐の後、腎炎や糖尿病、妊娠期間中などで、おまけに犬だって足の裏や腋の下などには汗腺があるから、運動をすれば当然ながら汗を掻く。ナトリウムフリーの食餌では失われた塩分を補うことはできない。

愛犬がやけに手足を舐めてくる場合には塩分不足のことが多く、また下痢や嘔吐の後にはしっかり塩分補給をしないと戻る体調もなかなか戻らない。

また塩分としてナトリウムと一緒に含まれる塩素は胃酸の成分であり、不足すると消化不良を引き起こす。

少なければ少ないほど良い、というものではない塩分について、ドッグフード派も手作り食派も、この機会に食餌を確認してみてはいかが?

(本記事はdog actuallyにて2008年10月7日に初出したものをそのまま公開しています)

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