ドッグフードを読む (3)

文と写真:アルシャー京子

昔の犬はヒトのおこぼれをもらっていたとはいえ、今のような白い小麦粉を使ったパンは少なかったはずだし、それでもパンには天然の酵母が用いられていた。野菜のくずや、今では副産物と呼ばれる内臓系肉の方が赤身の肉よりも多く与えられていたけれど、そこには現在のような農薬や残留薬品の問題はなかったはずだ。

だれも食餌バランスなんて気にしていなかったけど、いまよりも幸せだったのではないだろうかとまでさえ思える。

法律で定められているドッグフードの基準

2009年まで、日本国内で販売されるドッグフードの基準はペットフード公正取引協議会という47社の会員からなる団体によって守られてきた。これは市場のドッグフードの約90%以上が入会している団体だったのが、あくまでも協議会なので強制力はなかった。現実には市場にあるドッグフードはこの協議会の会員として規約に沿った表示をしていたか、もしくはそんなの関係なしに独自のポリシーを貫いているフードメーカーのどちらかが存在していたことになり、それがドッグフード派の判断基準を不安にさせる一因であったとも言える。

折しも2009年春に発生した、ドッグフードへの有害物質(メラミン)混入事件が起きたことにより消費者の不安は一層大きくなった。それを受けて消費者保護と動物愛護の視点から同年6月に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が制定された。この法律ではこれまでペットフード公正取引協議会で定めていた基準の一部を義務化したのである。

half in the bag

[Photo from Lisa Yarost

ペットフード安全法では使用した原材料をすべて表示することになっているが、協議会の規定によると原材料の表示はさらに基本的に最も使用量の多いものから順に書く事になっている。つまり、表示の一番最初に「穀類」とあれば小麦やとうもろこし、米そしてそれらの粉砕加工物がそのフードに最も多く使用されていることになる。しかし法律ではこれについては推奨のみで義務とはしておらず、ペットフード公正取引協議会会員のみこれに準じて表示している。

原材料のほかに添加物についても表示をしなければならないのも同様。

そしてもしもパッケージに「総合栄養食」との表示があれば、それはAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)で定められている犬の栄養学に基づいた食餌内容の推奨成分値にあった組成基準をクリアしたものであるということ。この基準を満たしたフードは公正取引協議会の基準を満たしたものであることの表示がされている。(「ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則」 「ペットフードの目的」参考)

少し余談をするならば、近年アメリカだけでなくヨーロッパからも多くのフードが輸入されるようになったが、アメリカとヨーロッパでは基準が異なる。アメリカAAFCOの組成基準はヨーロッパには自動的に適用されるわけではなく、ヨーロッパにはFEDIAF(ヨーロッパペットフード工業会連合)という業界団体の基準がある。ヨーロッパはヨーロッパの組成基準に則ってドッグフードの生産流通が行われているわけで、日本に輸入されているフードの現状を考えると、AAFCOだけでなくFEDIAFの基準も同様に総合栄養食の組成基準としてそろそろ取り上げられるべきである。

ただ、この基準に則って表示されているからといって、原料となる素材が必ずしも消費者の望むレベルの質を保っているという保証がないのがまた困ったところ...保証があるのならば先のアメリカでのフードスキャンダルなんか起こらないはずである。

もちろんこれらの表示に関することは協議会の会員でなくてもクリアすることはでき、非会員メーカーでもポリシーによっては使用原材料のすべてを明記しているところもある。しかし法的な規制があるとはいえ、その表示にはまだまだ大まかな分類であっても許される点があり、非会員メーカーが勝手に(表示の「総合栄養食」と表示したところで何の罰則もないことから、フードメーカーは好きなように出来る現状だ。

これでは消費者保護も何もあったもんじゃない。法的に緩い現状で私たちはただひたすらメーカの良識に頼るしかない。あまりにも値段の安いフードはもちろん避けるべき、その代わりに値段の高いフードが安心かというとそれは必ずしも保障できない。

ドッグフードへの不信感はいまだ晴れないままであるがどこかに落としどころはあるはずだ。

(本記事はdog actuallyにて2008年11月18日に初出したものを一部修正して公開しています)

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