もしかして日本人初?!いがちゃん、オーストラリアン・ノーズワーク競技会に出場の巻

文と写真と動画:五十嵐廣幸

[Photo by Baybark Photo]

「いつものようにノーズワークをやればいい」

アリーと私にとって初めてのノーズワークの競技会。だからこそ緊張しすぎないようにとそう心に誓った。行ったこともない場所、大勢の知らない人たち。そんな中でも今までの練習通りに行えばきっとアリーはターゲット臭を見つけ出してくれるはず。自分の犬を信じるんだと言い聞かせた。

エントリーしたのは午前中に行われる車両サーチとコンテナサーチ。午後に行われるインテリアサーチとエクステリアサーチも出場は可能だが、初めての競技会なので午前中の2つのサーチに絞った。朝6時過ぎには自宅を出て8時に入場。午後の部にも出場となると、閉会の午後5時までの長丁場となる。その間にアリーがエネルギーを消耗したり退屈したりするかもしれない。ノーズワークに対してネガティブな思い出を持ってもらいたくない。よって今回は2種目だけに集中したのだ。

競技会の正式名称は、セントワークトライアル(Scent Work Trial)。オーストラリア・ケネルクラブ(Australian National Kennel Council 、ANKC)  が主催している。オーストラリアにあるもう一つのノーズワークの団体、Australian Canine Scent Work(ACSW)と違い、この団体では臭気判別テスト(=認識テストORT)がないため、そのテストを受けずに競技会に出場できるのが大きな特徴ともいえる。

開場時間の8時になると車がひっきりなしにやって来た。他の犬に対して神経質な犬や攻撃的になりがちな犬を連れていれば、競技施設から遠く離れた場所に駐車することができる。アリーには攻撃性はない。しかし、私が車の窓を開けて男性係員に駐車場所を聞こうとした時に、窓を覗き込んだ係員に向かって猛烈に吠えた。そんなこともあって、駐車場の外れに車を駐めるように指示された。これが逆にラッキーだったと思う。競技フィールド近くの駐車場は沢山の犬が行き来したり、競技前の犬が待機したりする。私たちは外れにいたおかげでアリーは落ち着いて待機することができた。このような場所を確保するのも、競技会をうまくやりすごすための一つのコツなのだと今回学んだ。

参加者全員が集合したところで、競技前にブリーフィングが行われる。車両サーチでは犬を車の下に潜らせてはいけない。手をあげても、アラートは声で伝えないと認められない。ジャッジへの異議申し立てがある場合はサーチエリアから出てからすぐ行うといったルールや、安全上の確認などが伝えられた。この日の朝は気温がとても低いこともあってか、参加者の一人、ウィペットのハンドラーからは「犬にコートを着せたまま競技をしてよいか?」という質問があった。もちろんジャッジからの回答はノーであった。

競技前に試すウォームアップエリアが設けられている

38番。私とアリーのゼッケン番号が印刷された黄色い用紙を、スキーのリフト券と同じ様にして腕につけた。大会前にゼッケンが配られると聞いた時、私はアジリティの大会のようにハンドラーのシャツに安全ピンで留める布製のものや、着て付ける大きなサイズのものを想像していた。しかし当日受付で手渡されたゼッケンは手のひらほどの大きさの紙きれだった。

これってどうやってくっつければいいんだろう?困っていた私を見て、同じノーズワークスクールに通っている女性がゼッケンホルダーを貸してくれた。私たちはスタンバイ中におしゃべりをしたり、この日のために焼いたというビスケットをほおばったりして過ごした。そうこうしているうちにナーバスな気持ちが少しずつほぐれてきた。ずっと一緒に練習をしてきた仲間がそばにいるのはとても心強いものだ。

競技が始まるまでの間、私はアリーを何度も散歩に連れて行き排泄をさせた。ノーズワークでは競技中に排泄をしてしまうと一発で失格になってしまう。彼女は練習でもサーチ中に排泄をすることは滅多にない。しかし一度だけ、レッスン中に地面のニオイを嗅いだと思ったら、そのまま、シャーーーとオシッコをしてしまったことがある。その日を境に、ハンドラーが大丈夫と安心している時こそ一番気をつけないといけない、と考えるようになった。

これが車両サーチのエリア

「車両サーチのフィールドまで案内します」

競技スチュワードの男性に呼ばれた。今まで壁で隔てられていて見ることができなかったサーチエリアに通された。私はジャッジたちにGood Morningと挨拶をした後、スタートラインの確認を済ませた。

「準備ができたら自分のタイミングで始めてください」

とジャッジ。

「ショッピング!」

私はアリーに「探せ」のコマンドを出した。それから先のことはほとんど記憶にない。

車両サーチの対象物がどんな乗り物だったのか、どこにターゲット臭が隠されていたのか、それすらも具体的に思い出すことができない。自分でも驚くほど集中してアリーの行動を見ていた。彼女のヘッドターンといったCOB(Change of behavior 行動の変化)を見逃すまいとするあまりに、サーチエリア全体を見る余裕がなかったのだと思う。

サーチが終わった時、「well done! よくできました!」とジャッジが褒めてくれた。なんと時間内にちゃんとハイドを見つけることができたのだ。私はその興奮で何が何やらわからないまま、お礼の挨拶を済ませて、次のコンテナサーチのエリアに向かった。

二つの競技は無事終了。

YouTube用の動画を撮りながら表彰セレモニーを待っていた。しかし、競技の結果はそれほど気にならなかった。私たちはいつも通りのノーズワークをやった。アリーはどちらのサーチとも制限時間内にターゲット臭を見つけだし、私ははっきりと「アラート!」ここにありますと伝えた。

これぞ愛犬との共同作業、これぞノーズワーク、これがドッグスポーツなのだ。初めての競技会で知った私の快感である。

⭐️ ドキドキ初めてのノーズワーク競技会 動画もみてくださいね!(↓)

ドキドキ初めてのノーズワーク競技会 第37話

文:五十嵐廣幸(いがらし ひろゆき)
オーストラリア在住ドッグライター。
メルボルンで「散歩をしながらのドッグトレーニング」を開催中。愛犬とSheep Herding ならぬDuck Herding(アヒル囲い)への挑戦を企んでいる。サザンオールスターズの大ファン。
ブログ;南半球 deシープドッグに育てるぞ
youtube;アリーちゃんねる