文:北條美紀 写真と動画:藤田りか子
前回「あなたの犬は分離不安症です」その1で、「診断名は原因を語らない」と書いた。人の分離不安症の診断基準(DSM-5)の表現を借りると、分離不安症は、「愛着を持っている人物からの分離に関する、『発達的に不適切で』、過剰な恐怖または不安」を指す。犬の場合であれば、飼い主との分離に関して、『発達的に不適切』な吠えや噛み、破壊行動、粗相などの行動や身体症状が出現している(=過剰な恐怖や不安の表現)場合にあたるだろう。右腕をレントゲン撮影したら骨に観察可能な亀裂が入っていた、その現象を受けて、右上腕骨骨折と診断されたというのと同じだ。
では、愛着対象との分離に際して「『発達的に不適切で』過剰な恐怖または不安」が生じる原因は何なのだろう?
分離不安は正常な発達プロセス
人の分離不安症の診断基準に『発達的に不適切で』と明記されているが、すなわちそれは、