シャム猫カラーの犬、初の遺伝子同定へ

文:尾形聡子


[photo by Guido T] シャム猫に代表されるといっても過言ではない「ヒマラヤン・カラー」と呼ばれる毛色。毛色だけでなくブルーアイであることも特徴とされている。犬ではお目にかからないと思っていたけれど・・・。

シャム猫の毛色として有名な「ヒマラヤン・カラー」。胴体の毛色は薄く、足先、耳、尻尾、鼻先などにはポイントカラーと呼ばれる濃い色素を持つ毛が沈着している表現型です。猫ではシャムのほか、ヒマラヤン、バーミーズやトンキニーズなどがこの毛色を持ちます。ほかの動物種ではマウス、ウサギ、ミンク、スナネズミ、モルモットなどにも見られる毛色パターンです。最近では京都大学の研究で、同様の毛色パターンを持つマントヒヒの遺伝子解析が行われています。

色素産生になくてはならないチロシナーゼ

色素産生は脊椎動物全般に共通するメカニズムがあります。産生経路のスタートは、チロシンというアミノ酸をメラニンの前駆物質となるドーパキノンに変化させるところから始まります。そこで必要となるのがチロシナーゼという酵素です。ドーパキノンはまたほかの物質によって変化し、最終的には2種類のメラニン、ユーメラニンとフェオメラニンが作り出されます。

色素産生経路のもっとも上流で働くチロシナーゼが変異して、本来の働きができなくなると、もれなく色素産生にも影響が出てきます。もし、まったく色素を作ることができなくなれば、目が赤く毛は真っ白のいわゆる「アルビノ」になります。アルビノは人の眼皮膚白皮症にある7つのタイプのうちのひとつOCA1に分類されるもので、チロシナーゼが原因遺伝子となり発症します。OCA1の中でもまったく色素を作れないタイプから、わずかに作れるタイプ、そしてシャム猫のような「ヒマラヤン・カラー」になるタイプがあります。

アクロメラニズムとは

ヒマラヤン・カラーはアルビノの原因遺伝子と同じチロシナーゼという酵素に変異が起きているために作られる毛色なのですが、面白いことに、温度に依存します。高い温度になるとチロシナーゼがうまく働くことができなくなるため、体の中心部に近いところは白っぽく(色素が作られない)、体温が低い先端部になるとチロシナーゼが働き色素が産生されるため、ポイントと呼ばれる色がついた毛になるのです。このような現象のことを「アクロメラニズム(Acromelanism)」といいます。瞳の色を作る色素産生も減少し、通常青または赤い瞳となります。ちなみに猫のチロシナーゼ変異には3つの対立遺伝子があることがわかっています。


[photo by Benny Mazur] ネザーランドドワーフなどの種によく見られるヒマラヤンカラー。猫のヒマラヤンはもともと、ヒマラヤウサギの毛色に似ているため、そのように名付けられたそう。

このように、ヒマラヤン・カラーは猫やウサギでは普通に見かける毛色なのですが、これまで犬ではこの遺伝子の変異は報告されていませんでした。しかし、ロシアの一般家庭のブラック&タンの

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