犬の嗅覚パフォーマンスは栄養にも影響されている

文:尾形聡子


[photo by montillon.a]

犬はにおいの世界の住人と呼ばれるくらい鼻のいい動物です。人の1万~10万倍といわれる臭気検出能力とオペラント条件づけによる学習能力とを活かして、犬たちは麻薬や爆弾などの探知、人命救助やがんの嗅ぎ分けなどさまざまな場面で人々の生活を支えてくれています。

そもそもどうして犬はそんなにも鼻がいいのでしょうか。

解剖学的にも生理学的にも犬の臭気検出能力は人と比較にならないほど優れている

鼻から入ったにおい成分は鼻道を通って鼻腔に入ります。鼻腔上部には湿った嗅上皮と呼ばれる領域があり、そこに存在している嗅神経細胞からのびる繊毛上に存在する嗅覚受容体がそれらをキャッチします。嗅覚受容体がキャッチしたにおいは嗅球へと届けられ、そこでにおい信号が増幅され嗅覚皮質へと伝えられていきます。

人と比較してみると、犬は人よりはるかに大きい嗅上皮の表面積を持っています。また、人では1細胞あたり約25本の繊毛がありますが、犬はそれが数百本にも及びます。嗅覚受容体の種類によってキャッチできるにおいは異なり、その数も犬は人のおよそ2倍あるといわれています。さらに犬は鼻腔そのもののサイズも大きく、そこで作られる独自の気流がより優れた臭気検出能力へとつながっていると考えられています。そのため人と比べて犬は臭気物質の濃度が低い場合でも検出することができるのです。がしかし、繊毛の数や受容体の種類などは犬種による違いがあり、トレーニングによっても変化します。

ちなみに嗅神経細胞は30~60日間しか生存できないのですが、他の感覚細胞とは異なり絶えず再生することが知られています。とはいえ加齢によりそれらの機能も衰えていき、年齢とともに嗅覚受容体の数や繊毛の数が減少する、すなわち嗅覚が低下していくことがわかっています。

さて、このように優れた犬の嗅覚ですが常に一定の状態をキープしているわけではなく、気温や湿度などの環境条件、体調、水分補給、運動などの影響を受けて変化します。そのため、嗅覚を使って作業する犬のパフォーマンスクオリティを上げるための環境条件に関する調査研究が行われていますが、今回はその中でも食餌の栄養バランスについての研究情報を紹介したいと思います。これは作業犬だけでなく、嗅覚のスポーツ、ノーズワークを頑張っている方々にも有益な情報になるかもしれません。

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