やはり繁殖は大事~イングリッシュ・セターの先天性難聴に関する研究より

文:尾形聡子


[photo by State Farm]

犬の聴覚の状態についてふだん話題にすることはそれほど多くないものです。しかし、生まれながらにして聴覚が不自由な犬たちが存在している現実があります。

犬の聴覚の異常には大きく、先天性の場合と後天性の場合とがあります。そして先天性の多くは遺伝性のものです。聴覚の病気に限ったことではありませんが、生まれながら(または生まれてすぐ)にしてその病気を抱えている場合を「先天性」、加齢や感染症、怪我などにより発症する場合を「後天性」の病気といいます。また、遺伝性の病気の場合、生まれてすぐに発症するものならば先天性の遺伝性疾患、年齢がいってから発症するものならば成犬発症性(adult-onset)の遺伝性疾患というようないい方をします。

犬の難聴

犬の聴覚異常を伴う遺伝性の病気のひとつに、ドーベルマンや秋田犬などに好発する先天性前庭疾患と呼ばれる神経系の病気があります。先天性前庭疾患にかかった犬のほとんどは生涯耳が聞こえません。ドーベルマンでこの病気は常染色体劣性遺伝をすることが示されていましたが、先日ようやく両側性の難聴を持つ先天性前庭疾患の原因となる遺伝子がひとつ同定されたばかりです。また、ボーダー・コリーでは成犬(5歳くらい)になってから突然発症する(老齢性ではない)難聴が報告されており、常染色体優性遺伝をすることが示唆されています。しかしこちらについてはまだ原因遺伝子は突き止められていません。

もうひとつの遺伝性の聴覚異常は、先天性の感音性難聴(内耳や脳の聴神経などの感音器の何らかの異常が原因となり起こる難聴)とよばれるもので、多くの犬種で発症が確認されています。先天性の感音性難聴の大半は白毛(ホワイトスポッティング)やマールと密接に関連する色素細胞に問題があることが分かっていますが、原因はそれだけではなく、発症するには複数の遺伝子変異と環境要因とが影響する多因子性の病気になります。

感音性難聴は90犬種以上で発症が確認されている

先天性の感音性難聴は、生後2~3週間

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