文:藤田りか子
【Photo by congerdesignPixabay】
キシリトール。「キシリ取る」と引っ掛けて「歯ぎしり」を治す薬か何かと正直思っていた。だが、なんてことはない、英語でザイリトル(xylitol)と呼ばれている甘味料の成分名であり、日本語のダジャレた商品名ではないとわかったのはつい最近のこと(と白状しておこう)。
前置きはこれぐらいにして、キシリトールの犬への毒性について我々犬飼い主はぜひ知っておくべきだろう。天然の代用甘味料でガムやデンタルケア製品に入っていることでも有名だ。犬がキシリトールを摂取すると中毒症になるのを多くの人が知ることになったのは、2006年にアメリカで研究が発表されてからのこと。にもかかわらず、今年5月に過去5年間キシリトール中毒症にかかる犬が猛烈な勢いで増えているというニュースがアメリカンケネルクラブ(以下AKC)によって発表された。
キシリトールはチューイングガムに含まれていることでも有名だ。【Photo by Bob M】
アメリカのペットの中毒症相談サービス会社である「Pet Poison Helpline」(ペット中毒症ヘルプライン)によると、キシリトール中毒症として相談を受けた電話件数は昨年(2018年)で4,000件。Pet Poison Helplineの過去データベース全体では約20,000件。
「2013〜2018年という過去5年間を振り返ると、なんと230%もの増加率を見せています」
と当相談所の獣医療サービスを担当するAhna Brutlag獣医師はAKCに語っている。キシリトールといえば、思い出すのはチューイングガム。虫歯予防にもなるのでガムに含まれているのは誰もが知っている。だから犬がガムなどを誤飲しないよう、飼い主は細心の注意を払っているはずだ。だが問題は、まさかガム以外のものにキシリトールが添加されているとは多くの人が気づいていないこと。含まれているのはどうやらダイエット食品だけに限らないようだ。
「特に最近です。こんなものにも含まれているのか、というぐらいキシリトールがあらゆるところで使用されるようになりました。例えばデオドラント、ピーナッツバター、潤滑ゼリー、睡眠薬、シェービング・クリーム、人用歯磨き粉など。だから愛犬がシェービング・クリームや潤滑ゼリーのチューブをかじって遊んでいたとしても、それが死に至るほど危険なことだなんて、誰も最近まで考えたこともなかったのですよ」
とBrutlag獣医師は言う。
さて私が住むスウェーデンでは興味深いことに、アメリカほどキシリトールで犬が中毒症になる症例はほとんどない。スウェーデンの最大大手ペット保険会社「アグリア動物保険」の獣医師である クラーラ・L・リングボリーさんはその理由を以下のように説明してくれた。
「スウェーデンでは我々人間のみならず愛犬に対しても『何を口に入れているのか』についてかなり気を配る傾向があるからではないでしょうか。もっともアメリカほどピーナッツバターも普及していませんが!また肥満という問題もアメリカよりは少ないので、ダイエット食品がそれほど市場にあふれていない、ということも理由にあるかもしれません」
日本における犬のキシリトール中毒の症例頻度については12年前に出された日本獣医学会のウェブサイトの記載によれば、非常に少ないとのこと。現在の状況については残念ながら調べることができなかったのだが(もしご存知の方がいればご一報を!)、キシリトールは日本でもガムやデンタルケア製品に含まれている。人用の歯磨き粉を使って犬の歯を磨かない、犬が届くようなところにキシリトール入りガムをおかない、など我々も細心の注意を払うべきだろう。
なお犬のキシリトール中毒について詳細を知りたい方は、ウェブサイトを以下にいくつかピックアップしたので参考にされたい。
【参考文献】