ドイツ PRO-DOG特別セミナー「インパルス・コントロール」&「攻撃性を学ぶ」開催報告

文と写真:尾形聡子

1月12日、13日の2日間にわたり、『犬曰く』と犬雑誌の『 Terra Canina(テラカニーナ)』の共同主催による「ドイツ PRO-DOGのアンドレア・ペチュ(Andrea Petsch)トレーナーによる特別セミナー」を開催いたしました。日本では初めてのセミナー講師をされたというペチュさん。そして犬曰く/テラカニーナ共同主催としての初セミナーでもありました。告知から開催までの期間が短かったにもかかわらず大勢の方にご参加いただきましたこと、この場を借りてお礼を申し上げます。

12日、浅草会場でのセミナーでは「インパルス・コントロール」がテーマでした。前半はアンドレア・ペチュさんがインパルス・コントロールとは何か、どのような形であらわれ、それはなにが原因となって生ずるのかということを丁寧に解説。

PRO-DOGのトレーナー、アンドレア・ペチュさん。

実際ドイツでも犬のインパルス・コントロールが問題となるケースがとても多いといいます。インパルス=衝動的に起きる行動、をコントロールできるようにと、「インパルス・コントロール」は人々が熱心に取り組んでいるテーマになっているそうです。

後半には実際に犬に衝動的に起きる行動をいかにしてコントロールするか、実践するための段階的な方法を丁寧に解説。3頭の犬たちそれぞれへの対応だけでなく、一般的にどのように行えばいいのかという観点からも理解できるようにお話くださいました。

実際に診断を受けにきた犬たちの実践コーナーでは参加者の皆さんの目が釘付け状態でした。

セミナーのさいごには「インパルス・コントロールと狩猟行動の違い」について詳しい説明がありました。パッと違いを説明できそうでなかなか難しいこのようなことを丁寧に解説してもらえて、いままで絡まっていた思考の糸が一気にほどけるような感覚を得ることができました。

実際セミナーに参加されていたトレーナーさんからは「今まで言葉でうまく説明できなかった状況が“インパルス・コントロール”を学べたことで、あちこちに散らばっていたことの整理ができ、とても腑に落ちた」との感想も。

先日の藤田りか子さんによる『オス犬のマーキング管理とインパルス・コントロール』のブログが一躍人気記事になっていることからも、犬の自制心を養う「インパルス・コントロール」という考え方に、今後大きな注目が集まってくるかもしれないと感じました。程度の差はあるでしょうが少なからずどの犬にも関係してくることだからです。

ジモーネ・ポールさん(左)とアンドレア・ペチュさん(右)。

続いて13日、上野会場でのセミナーでは「犬の攻撃性」がテーマでした。昨日に引き続きドイツ PRO-DOGのトレーナーであるアンドレア・ペチュさん、そしてPRO-DOGのオーナーでありトレーナー、そしてトレーナーの先生も務めるジモーネ・ポールさんのお二人揃っての豪華なセミナーとなりました。

前半は犬の攻撃性についての概要そして脅し行動の細かな分析、さらにさまざまな映像を見ながら解説が加えられたことでとても理解しやすい内容となっていました。あらためてなぜ犬が攻撃行動をとるのかを整理しながら考えることができました。

そして後半は参加者のみなさんから質問をよせていただき、それぞれのケースについてアドバイスをいただく時間に。トリマーとして、トレーナーとしてなどさまざまな立場で日常に経験している「こういう攻撃的な行動に対してどうしたらいいの?」という質問が次々とでてきました。このような場を通じて普段経験することのないだろう状況があることや、その対応方法を知ることで、自分自身の中での応用の幅を広げることにもつなげられると感じた時間となりました。


質問にはホワイトボードも使って丁寧に解説してくださいました。

両日ともに「もう少し話が聞きたい!もうちょっと質問したい!」という雰囲気の中、セミナーは終了時間に。参加者の皆さんのとても熱心な気持が素晴らしいセミナーをつくり出してくださっていました。主催冥利に尽きることです。また、セミナーの通訳は犬曰くでもおなじみのアルシャー京子さん。セミナーの内容が専門的になればなるほど、的確な通訳をしてもらえることがどれほど聴講者にとって有益であるかということを改めて感じた素晴らしい通訳をしてくださいました。

PRO-DOGのアンドレア・ペチュさんとジモーネ・ポールさん、お二人のお話から感じたのは、何かを説明したり改善しようとするための理論やエビデンスの知識がとても幅広く豊富で、それと実践とが乖離することなく見事に調和していたことです。犬と人の両方に対してきちんと対応できるのも、2日間の素晴らしいセミナーの時間を作ってくださったのも、知識と経験の両方をバランスよく持っているからこそだと思いました。

我曰くセミナーでも毎回感じていますが、今回も皆さんと直接お会いしてお話できる場をつくっていくことの大切さを実感しました。今のところは東京地区での開催のみになっていますが、いずれ各地でも開催できるようになれればと思っています。

今年はこのようなセミナーの開催を増やしていく予定でいますので、興味をお持ちになったセミナーにはぜひ皆さんふるってご参加くださいね!

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