パピー・ノーズワークとアシカの競技会デビュー

文と写真:藤田りか子

先日、アシカは初めて公式のノーズワーク・ノービスクラスに参加した。そして満点を獲得。初のサーティフィケートを得ることができた。

ラッコとのノーズワークの楽しさに味をしめた私は、アシカが我が家にやって来てその翌日には、すでにノーズワークを教えていた。本当はまず新しい家庭に慣れてもらおうと一週間はトレーニングを待つつもりだった。しかし、アシカは気質が気丈であった。やって来たその日から環境の変化など気にもせず遊んでリラックスをしていたし、夜はヘソ天で寝ていた。翌朝起きた時に、

「ちょっとぐらいなら試しても…」

と始めてしまった。ちなみにその時彼女の年齢は8週目。ブリーダーのところから来てホヤホヤのちびっこだ。

そんな彼女が、あの日からほぼ一年と20日後の先日、初の競技会デビューを果たした(スウェーデンではノーズワークの競技会に参加するには一歳になるのを待つ)。のみならず、なんといきなり満点を獲得した。つまり4つのサーチにて時間内に全てのにおいを探し当てたということ。おまけに失点ゼロ。満点で失点が3点以内であれば、スウェーデンではディプロマ(サティフィケート)が与えられる。これを三つ集めれば次のクラスで競うことができる。初の競技会、初の満点、そして初のディプロマ。その一週間後に再び競技会に参加したのだが、そこでも満点。インテリア・サーチの部門では優勝を果たした。母ちゃんの誇らしさは想像に難くないだろう。

話はアシカの子犬時代に戻るが、ノーズワークはパピー時代の彼女にうってつけの遊びとなった。塩を入れる瓶にユーカリ臭を含んだ小さなコットンを入れ、それを彼女の前に差し出す。

「なんだろう?」

と好奇心で鼻をつけたらクリッカーを鳴らしてトリーツ。クリッカーの音の意味なんて予め知っておく必要無し。やっているうちにクリッカーの音がなればトリーツ、ということぐらい子犬のこと、すぐに学ぶ。以下の動画を参考にされたい。

アシカが我が家に来て翌日に始めてしまったノーズワークの様子。無理なく楽しくにおいを覚えてもらう。パピーのアクティビティとして最適であるのがわかるだろう。

最初は一つしか瓶を差し出さないのだが、コンスタントに鼻をつけるようになったら、空瓶を含めて二つ置く。当然2本目の瓶にも鼻をつけるが、においが入ってないので、私はクリッカーを鳴らさない。子犬は「あれ?いつも鳴っているはずなのに」と今度はもう一つの方を嗅ぐ。そこでクリッカーが鳴る。これを何度か繰り返しているうちに、

「あのにおいがついた方を嗅げば、クリッカーが鳴るのね!」

と学習する。そのうち一つ一つ空瓶の数を増やして、「正しいにおいを選ぶ」という行動を強化させていく。一週間も経たずに彼女は6本の瓶から正しいにおいのものを選べるようになった。この学習の間「だめ!」とか「いけない!」なんてネガティブな言葉を発すること一切無し。強制も矯正も無し。子犬は自主的ににおいを嗅ぎに行く。そしてクリッカーが鳴るたびに大好きなトリーツを食べられる。「選ぶ」という行為を行うためには、鼻も脳もどちらも使わなければならない。アシカに限らずパピーにとってこんなにやりがいがあって楽しい遊びはないと思う。におうという行為は犬にすでにデフォルトで備わっている。それを使っての遊びなのだから面白くないはずがない!

初めてのトレーニングから一ヶ月半後。つまり生後三ヶ月半。アシカは探索をして臭源を探す、というコンセプトをはっきりと理解した。さすが、この辺り、犬である!動き回り探す、という行動は彼らの本能。私が教えたわけではない。

アシカと私の大きな目標は「鳥を回収するチーム」になることだ。が、パピー時代にノーズワークを一緒に楽しんだことで、彼女と私の間には将来一緒に仕事をするために必要なチームワークのフィーリングも早くから培われたとも思う。

ノーズワークのご利益はそれだけではない。回収犬に必要な鼻仕事の丹念さも鍛錬された。アシカが7ヶ月齢になった時に兄弟犬5匹と一緒に、実際の鳥(もちろんすでに死んでいる)を森にいくつか置いてエリアを探させるというトレーニングを行なった。その時アシカの働きをみていたブリーダー(アシカ兄弟を育てたブリーダーだ)が、

「他の子達に比べて鼻を使い出すのが早いっていうのがよくわかる。ノーズワークをやっているからだろうね、きっと」

と褒めてくれたのは、正直すごく嬉しかった。他の兄弟たちは当時まだ不慣れで、最初はただエリアを闇雲に走っていただけだった。だが、アシカはフィールドに出されると、すぐに鼻のスイッチをオンにして「探す」という行為を見せた。ぐるりと円を描きながら走るのだ。風を使ってにおいを探しているのがよくわかった。

フィールド・トライアルに出るには彼女にはまだまだ修行が必要だ。が、ノーズワークの競技会に向けての練習をしながら、代わる代わるに部門の違うドッグスポーツのトレーニングを行なっている。これはどちらかを飽きさせないためにもすごくいいものであるし、私にとっても毎回のトレーニングがリフレッシュとなる。