致命的な呼吸困難、ダルメシアンの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の遺伝要因

文:尾形聡子

[photo by Maja Dumat]

急性呼吸窮迫症候群(Acute Respira-tory Distress Syndrome:ARDS)とは肺炎や外傷などさまざまな原因により、急性に重度の呼吸困難を起こす死亡率の高い病気です。数年前、歌舞伎役者の中村勘三郎さんがARDSにより逝去されたことから、この病名を目にされた方もいるのではないかと思います。

ARDSは人だけでなく多くの生物種で自然発症することが報告されていますが、犬も例外ではなく、20年ほど前にすでに、若齢のダルメシアンでは家族性のARDS発症が見られることがフィンランドのヘルシンキ大学の研究により報告されていました。同大学ではその後も研究を続け、このたび遂にダルメシアンの子犬や若犬に発症するARDSの原因となる遺伝子変異を明らかにしました。

ダルメシアンでのARDSとは?

ダルメシアンのARDSは遺伝性の肺組織疾患です。主な症状は重篤な呼吸困難で、病理学的には肺障害が多く見られます。生まれたばかりの子犬や若い犬に起こるARDSは劣性遺伝するだろうことが20年前の研究から示唆されており、人での間質性肺炎(肺胞と毛細血管を取り囲む間質と呼ばれる組織に生じる病態)が急激に悪化する症状と似ていることが分かっていました。

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