文:尾形聡子
気温も上がり水遊びにはもってこいの季節の到来です。水好きの愛犬によさそうな水場を発見!となっても、ちょっと待って。その水場はきれいですか?たとえ水はきれいに見えたとしても、緑色のものが水面の片隅に浮かんではいませんか?特に、流れのない湖や沼、池などでは夏場に大量発生しがちなラン藻類。一般には、ラン藻類の一種をアオコと呼んでいますが、アオコの中には毒素を作り出す種類があるということを、みなさんご存知でしょうか?
2011年、イギリスやアメリカの湖で水遊びをした犬が死亡事故にあうというニュースがありました。死亡原因は、アオコが作りだした毒素で肝細胞が壊されたことによる急性肝不全だとしています。アオコを直接口にせずとも、アオコの生み出す毒素が混ざった水を飲むだけでも危険なのです。
一般に、アオコの毒を摂取してから数時間以内に、口から泡をふいたり嘔吐したり、下痢などの症状があらわれるそうです。アオコの毒は、またたく間に肝臓を破壊してしまいます。そして、摂取した量によっては死に至ってしまいます。
またラン藻類の中には、肝臓毒だけでなく神経毒を産生するものも存在します。そのような神経毒にさらされると、けいれんや麻痺などを引き起こすことがあるそうです。けいれんや麻痺などが起こった場所によっては、たとえばそれが呼吸のために使われる筋肉だった場合などには、生命の危機に瀕する場合も出てきます。ボートを漕ぐだけで毒にさらされることもあり、皮膚の発疹や目の痒み、呼吸器症状などが見られることもあるそうです。
たとえ、アオコで覆われていないところで水遊びをしたとしても、もしその水場のどこかでアオコが発生しているならば、アオコの毒素は水中に溶けだしています。本来ならば、水質を検査して管理しているような水場で愛犬と遊べるといいのですが、なかなかそのような状況になっていないのが現状でしょう。日本でもアオコが作り出す毒素は多くの湖や沼で発見されているそうです(※参照:アオコってなに?)。
ですので、愛犬と水遊びする時には、くれぐれも水の流れのしっかりとある、綺麗な水場を選ぶようにしましょうね。
※アオコについて詳しく知りたい方は、京都大学生態学研究センター 中野研究室のアオコ・プロジェクトの研究成果物である『アオコってなに?』を是非ご覧ください。
(本記事はdog actuallyにて2011年9月13日に初出したものを一部修正して公開しています)
【参考サイト】
・Medicalxpress
・The Telegraph