文と写真:藤田りか子
水好きの犬だからこそ。ドイツの多様目的ガンドッグ、ヴァクテルが水場に来ただけで興奮して震え始めた。ハンターが行きたい欲を抑えているところ。
5月に入れば気温はジワリと上がってきて、これぐらいの季節から犬を水場に連れてゆきたくなる。果たして当の愛犬は水好きか、否か?これは個人差によるところが多いけれど、犬種によっては水好きの犬が多いという傾向はある。とくれば、オバマ氏の愛犬として有名になったポルチュギース・ウォーター・ドッグなぞ、その筆頭になりそうだ。何しろ読んで字のごとく、ウォータードッグとは水犬以外なにものでもない。
ポルチュギースに限らず世界にはたくさんのウォータードッグがいる。水場で仕事をするのがその歴史的役割だ。そしてこの部類の犬は、それだけでひとつのカテゴリーが組めるほど、実は非常に範囲が広い。のみならず歴史的にも古い種群にあたる。ラブラドール・レトリーバーだって、あるいはプードルですらウォータードッグのカテゴリーに属する。
犬の水関係職業で代表的なものには以下の種類がある。
- 水難救助犬
- 漁犬
- 水鳥猟犬
本当は探せばもっとあるのだが、ここまでにしておこう。これら犬たちの仕事には共通項がある。その基本は、
「水に濡れたくない人間の身代わりとなって、何かを回収すること」
だから多くのウォータードッグは物品欲が強い。物品欲というのは、ものをくわえたがる性質をさす。しかし、ああ、ほんとによかった。犬が水好きで。何しろ自分から入りたがっているのだから、水場に送り出しても、こちらに罪悪感というものが沸かない。それに引き換え人間はちょっとでも靴の中に水が浸みただけで、大変な不快感を感じるものだ。
ゴールデンレトリーバーもウォータードッグ。水場での回収技はこのとおり!鳥をくわえ、嬉々として泳いで帰ってくる。
水鳥猟犬にあたる犬種が世界で一番多い。アイリッシュ・ウォータースパニエル、レトリーバー全6種、オランダの珍犬ヴェッターフーン、アメリカのアメリカン・ウォータースパニエルしかり。そしてフランスなぞは、得たいの知れない巻き毛の水鳥犬がゴチャゴチャといろんなローカル名で存在しており、もういちいち犬種名をあげていられない。
ポルチュギース・ウォーター・ドッグは、漁犬の部類に入る。これは非常に珍しいお仕事なのだけれど、もう一種同じような仕事をする犬がいる。ポルトガルの隣国スペインのスパニッシュ・ウォーター・ドッグだ。水に浮かぶ漁師の網や、網から零れ落ちた魚を回収したり。
カナダ出身の巨大犬、ニューファンドランドも似たような仕事をしていた。しかしこちらは、そのデンとした図体を活かして、水難救助犬としての活躍の方が名高い。ちなみにレオンベルガーも水が大好きな犬で水難救助犬として使われている。
ポルチュギース・ウォーター・ドッグの親戚犬にあたるスパニッシュ・ウォーター・ドッグ。
ここで水場の回収技で遊ぶときのワンポイント・アドバイス。水場に来ると、水好きの犬なら、キューキューいいながら興奮することもあるだろう。回収技をきちんと犬に入れたいときは、まず陸でしっかり訓練をしてから。その反対にしてしまうと、陸では回収してくれない犬になるリスク大。また水場でのストレスにまいあがり、回収するにはするが、いい加減な回収でおわってしまう。そうすると勝手に物品を口から出してしまうというような、悪い癖もついてしまう。気をつけて!
(本記事はdog actuallyにて2009年4月22日に初出したものを一部修正して公開しています)
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