文と写真:藤田りか子

今年も残すところあと2ヶ月。今年の干支は午(うま)。馬は私の好きな動物の一つであり、その干支の年がもうすぐ過ぎ去ってしまうのは、ちょいと悲しい気もする。そんなわけで、午年を名残惜しみながら、今回は、馬の話を。もちろん犬曰くだから、犬も登場する。
ヨーロッパに住んでいるとよくわかるのだが、馬のいるところ必ず犬がいる。実際に日本でも乗馬クラブを訪れてみると、その状況はほぼヨーロッパと似たものである。
日本でおなじみのジャック・ラッセル・テリアは、ヨーロッパの乗馬愛好家の間ではマスコット犬になっているほどだ。驚かれるかもしれないが、乗馬スポーツはヨーロッパではそれなりの地位を得ていて、スター選手ともなると、タブロイド誌にも登場する。そんなスター選手がジャック・ラッセルを何気なく小脇にかかえ、馬術場にやってくる。それがスポーツ新聞や乗馬雑誌にどーんと載ったりする。スウェーデンの乗馬スターには 大手アパレル企業H&Mがスポンサーについたり、さらにはモデルまで務めてしまう人もいる。容姿端麗な選手も少なくないから、何をやってもどうしても絵になってしまう。そして少女ライダーたちは、憧れの乗馬スターのマネに走る。
「私もジャック・ラッセル!」
というわけで、地元の乗馬競技大会にいくと、案の定そこここにジャック・ラッセルがワサワサ。しかし乗馬ファンに飼われているジャック・ラッセルに関しては、たとえブームが来てもあまり心配はない。何しろ、飼い主の少女たち(おばさんもいるけど)は乗馬クラブ通いだったり、あるいは自宅に馬小屋を持っていたりで、ジャック・ラッセルたちは絶えず馬小屋近辺でうろうろすることができる。適当に馬をちゃかすこともあるだろうし、ねずみを探すこともできる。これぞテリア本来の姿でもある。

ジャック・ラッセルが乗馬ファンのマスコットになったのは、イギリスにおけるキツネ狩の文化がその背景にある。馬に乗ってフォックスハウンドのパックと共に猟に出かけるシーンをテレビや映画で見たことがある人も多いはずだ。フォックスハウンドはそのよく効く嗅覚でキツネを探し出し追い詰める。そしてキツネが巣穴に逃げ込んでしまうと、今度はテリアの出番だ。地中にもぐり込んでキツネを威嚇し、穴から追い出す。そこをさらにハウンドが追いかける。ただしこの猟法は過度に獲物をストレスにさらすということで、今では禁止となっている。
キツネ狩りの際には、馬に乗った誰かがテリアを小脇に抱え、ハウンドのパックについていく。あるいは、テリアを馬と伴走させることもあった。テリアの中でも猟欲の高いフォックス・テリア(のちにオーストラリアでジャック・ラッセル・テリアとなる)は大変重宝されたようで、こうして「馬といえばジャック・ラッセル・テリア」という構図ができあがった。

と考えると、あまりにも短足のラッセルテリアは本来の使用目的から外れるということになる。馬についていけるぐらいなのだから、ある程度脚の長さは必要なのだ。
もともとテリアたちは、馬小屋の周辺にたくさんいるネズミを狩るために重宝されていた。だが、イギリスの貴族たちは、その能力をキツネ狩りにも応用した。現在でもイギリスには、フォックスハウンドの犬舎の隣で飼育されている、実猟用のジャック・ラッセルが存在する。

