文:尾形聡子

[photo by Juha Saastamoinen]
「がんばって」「ほら、こっち」「違う、違う」
犬と一緒に何かをするとき、私たちはつい声をかけてしまうものです。でも、ちょっと待って。あとから振り返ると、犬を応援しているつもりでも少し口うるさかったかもしれないと思うことはないでしょうか。
ノーズワークの現場では、「ハンドラーは黙るべし」という経験則があることが知られています。「口うるさいハンドラーはノーズワークで失敗する、の科学的エビデンス」の記事にて、藤田りか子さんは、「口うるさいハンドラーほど、犬が混乱し、結果的に失敗しやすい」という現象を、実体験と研究の両方から紹介しています。犬がターゲットのにおいを探せないのは聞こえていないからではなく、集中や判断に必要な余裕を失っているからかもしれない、という視点です。
ここで、ひとつ疑問が浮かんできます。飼い主の声が犬の脳の働きに影響するのはわかるのですが、それは犬の体そのものにも影響しているのではないか、ということです。人の声によって犬の感情状態や覚醒度が変わるとき、その変化は犬の行動やパフォーマンスだけでなく、もっと基礎的な身体の制御にまで及んでいる可能性はないのでしょうか。
覚醒度という「つまみ」、上げるとよくなるが、上げすぎると崩れる
犬の行動を考えるとき、近年よく使われる概念のひとつが覚醒度(arousal)です。
覚醒度とは、

