「犬のADHD」が広がりつつある今だから―ラベリング効果とループ効果による自己増殖

文:北條美紀


[Photo by Erik Brolin]

ADHD(注意欠陥多動性障害)という診断名は、ここ数年で広く一般的に認知されつつある。ヒトのADHDについて日本のデータを確認すると、2010〜2019年度の間に、0~6歳の子どもの年間発生率は 2.7倍、7~19歳で 2.5倍、そして成人(20歳以上)では 21.1倍に増加したという報告がある。これは、ADHDの新規発症数が増えたというより、ADHDという診断名の確立と、その広がりによってADHDだと診断される人が増えたと考えるべきだろう。

この流れは犬の世界にも見て取れる。最近の犬の研究を調べると、衝動制御や注意・集中の困難、過活動といった特性がヒトのADHDに近い現象として取り上げられることが増えている。海外の研究では、犬の多動性や衝動性の測定尺度が作成され、犬種差や生活環境の影響についての調査が行われている。それと並行して、一般飼い主の間でも「犬のADHD」という単語が急速に浸透しているのも事実だ。診断名のもたらす犬への効果については、「『あなたの犬は分離不安症です』その1~病名は誰のため?」でも触れたが、ADHDの急激な増加を考える上で、今回はラベリング効果とループ効果という概念について

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