文と写真:藤田りか子
ヨーロッパは今、猟のシーズンたけなわ。私の家の裏はちょうど猟師のたまり場になっていて、朝早くから、コンビやら4WDっぽい車でどしどしと乗り付けてくる。その中に、一つだけ犬を連れている車があって、その人がその日の猟犬のハンドラーとなる。これから始まるのは、ヘラジカ猟だ。その数約30万頭で、狩られるのは10万頭。北欧ならではの10月〜1月に及ぶ文化行事。この国では、貧富に関係なく多くの人がハンターになれる。要は、猟野を持っている人に招待してもらえればよし。もちろんそのためのお金は出さねばならないが、イギリスに比べればたいした額ではない。
ヘラジカ猟で活躍する犬というのが、たいていは北欧原産のイェムトフンドという狼によく似たスピッツ犬。スウェーデンではゴールデンやシェパードに並び登録数の多い犬のひとつである。あるいは、ノルウェー原産のノルウェジアン・エルクハウンドと、これら2種が定番だ。が、時にもっとローカル色の強い犬が現れることもあって、フォーンにブラックマスクが特徴のヘレフォシュフンド、スウェーデンのダーラナという中北部から北では、ホワイト・ムーススピッツも使われる。そしてフィンランドの方に近づけば、ロシアのライカというスピッツも活躍する。場所によって猟犬がさまざまということは、地方色が残っているということで面白い。
ヘラジカ猟では絶対にトライカラー系のハウンド犬は使われない。ハウンド犬は