文:北條美紀

[Photo by Tolga Ahmetler]
これまで犬曰くで考察してきた「犬への愛着の強さ」と「飼い主の健康や幸福」との関係が、オーストラリアのラ・トロープ大学、心理学と公衆衛生学の研究者たちによって、とうとう実証された。ああでもない、こうでもないと頭と心をひねってきたことが明らかになった記念に、ノースラップら (Northrup et al.,2024) の研究を紹介しつつ、犬と飼い主関係の重要性について改めて考えたい。
研究対象者は誰にするの?
「愛犬との交流は飼い主の精神状態にどう影響するか?」の中で、尾形さんは「犬を飼うと飼い主が健康(あるいは幸せ)になる」ことを検証しようとする研究の結果が一貫していないことを指摘し、その原因の一つとして、しばしば「犬を飼っているか否か」という二分法で研究対象者を選んできたことを挙げた。その指摘を踏まえて、私自身も「犬との交流はヒトの心身に良い影響を与える」という研究結果、一貫しないのはなぜ?」で、「研究対象は適切なのか」と疑問を呈した。ノースラップらは、これらの指摘について、
「これらの矛盾した研究結果(犬を飼うことの飼い主へのポジティブな効果が一貫して示されないこと)に対する説明の一つとして、先行研究の多くはペットとの関係性を考慮するのではなく、ペットを飼っているかどうかにのみ焦点を当てていることが考えられる」
と同様に見解を示し、この研究の中では単純な二分法ではなく、犬を飼っている人の中で、何がメンタルヘルスを左右しているのかについて精緻に検証しようとした。
愛着の強さって何? 検討すべきは愛着の量ではなく質なのでは?
またしても

