文:藤田りか子
[Photo by Jne Valokuvaus]
私の横で寝転んでいたミミチャンが、ちびっこラブラドール・レトリーバのシャチに遊ぼうとせがまれ、ソファから降りた。その途端
「キャーーーーン!」
という悲鳴。何事かと足下を見ると、まるで死にそうな顔をしてミミチャンは床にうずくまっていた。シャチはなんのことやらわからずといった風で無邪気にミミチャンの上に被さりじゃれている。
シャチをどかせ、ミミチャンを歩かせようとした。すると、立ち上がるが、左の後ろ足を掲げたまま、地面につけようとしない。とても苦しそう。捻挫なのか、それとも??
痛みの恐怖で体が震え、すっかり怯えているようだ。そのまま机の下に隠れてしまい、しばらくそこから出てこなかった。むむ、これは、単なる捻挫ではなさそうだ。時刻は金曜日の夕方6時過ぎ。かかりつけの獣医はすでに閉まっていた。なぜ、うちの犬はいつもこんな風にタイミング悪い時間や曜日にケガをしたり病気になるのだろう。ま、内臓関係の病気とかではないので、緊急性は低い。月曜日まで待つか、とネットで調べ、AIにも聞いてみた。
するとAIから前十字靭帯断裂ではないか、という回答が戻ってきた。
「がーーーん」
私が記した描写からすると、その可能性はかなり高いという。これまで友人の犬が前十字靭帯断裂になった話を何度も聞いてきたし、手術を受けた後に長いリハビリ期間があるのも知っている。その度に「気の毒に」と思っていたが、自分の犬にもとうとう降りかかってしまったようだ。
今朝まであんなに元気に走り回って、おまけにガンドッグのトレーニングも上手にこなしていたミミチャン。これから、治療で好きなだけ走り回ることができなくなるのか…。そして、競技会!!もう、ガンドッグの競技会に出場することができなくなるのだろうか。今や4歳。何においてもちょうど脂がのり始め、スキルをぐんぐん伸ばしているところ。実は秋は三つほど競技会に出る予定を立てていたところなのだが。
ミミチャンの生活はいつでもどこでもパワフル稼働!この生活がしばらくなくなってしまうのか…?? [Photo by Rikako Fujita]
スポーツドッグとしての復帰の可能性はあるのか?早速文献をあさってみた。近年はアジリティ犬のケガに関する研究が進んでおり、その中に前十字靭帯断裂後の回復率を調査したアメリカからの最新の論文を発見した。
前十字靭帯断裂はスポーツドッグに決して稀なケガではないという。きっと私と同じ悩みや心配を持つドッグハンドラーは多いはずだ。というわけで、この論文のダイジェストをここに記したい。参考になれば幸いだ。