文:尾形聡子
日々孤独を感じながらひとりで生活を送っている人は、この世の中に一体どのくらいいるのでしょうか。一人暮らしの寂しさから、中にはペットを飼育したいと考えている人もいることと思います。一般的には、ペットを飼育すると孤独感が軽減されると考えられているでしょうが、Anthrozoos に発表された報告によりますと、ペットは人の孤独をいやすための万能薬とはならないそうです。
カナダのカールトン大学の研究者らによりますと、一人暮らしをしていて限られたコミュニティとしか社会的な結び付きが無い場合、ペット飼育の有無に関わらず、同じ程度の孤独を感じているそうです。しかも、そのような人々は飼い犬を擬人化する傾向にあり、強い愛着を持つ場合には、孤独や憂鬱をむしろ増強させてしまうことがあるそうなのです。
一方で、社会的な生活を送っている場合には、犬を飼育している人の方が飼育していない人よりも孤独を感じていないということが分かりました。また、犬を介することで他の人々との接点を持つことも増え、より社会的な生活を送れるようにもなると研究者らは言っています。
カナダの例にもれず日本も、高齢者だけでなく若年層においても単独世帯数の割合が高まっています。総務省の調べによりますと、2010年の一般世帯に占める一人暮らしの割合は3世帯に1世帯(32.4%)となっており、その5年前の国税調査のときの29.5%からさらに増えています。一人暮らしで犬を飼育している人もより増えていると想像できます。個々の生活スタイルを考えて、犬を飼育できるかどうか検討するのはもちろんのことですが、寂しいからといって犬を飼おうとする前に、ペットを飼うことは大変な面もあり、人間関係の不足からくる心の穴を埋めるためのものではないということもしっかりと考えて欲しいと思うのです。
(本記事はdog actuallyにて2010年4月15日に初出したものを一部修正して公開しています)
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【参考サイト】
・総務省統計局