文:尾形聡子
[photo by Strelciuc]
人の人生を犬は豊かなものにしてくれる。そう、実感している人は世界中にいます。だからこそ、文明化が進んで犬の人間社会での役割は変化してきましたが、それでもなお、犬は多くの人に愛され続けています。
そんな実感をどのようにして証明したらいいのか、科学者たちはあの手この手で研究を続けてきました。その口火を切ったのは、「犬の飼育と健康との関連性」を調べる方法でした。そこから「犬の飼育とメンタルヘルス」との関連性に注目が集まるようになり、研究が続けられています。体の健康と心の健康は密接な関係にあるためです。しかし、「犬を飼うから健康になる」とか「犬を飼うと幸せになれる」ということについては横断的研究でも縦断的研究でも、量的なアプローチでは因果関係を証明しにくく、結果に一貫性がないのが現状です。
実際に、犬を飼っている人はストレスが少ない、幸せ度が高いというようなことを、すべての研究が示しているわけではありません。最近紹介しました「コロナ禍中に犬を飼い始めた人のウェルビーイングは高まっていたか?」では、その裏付けとなる証拠はほとんどありませんでした。むしろこの結果は、犬を飼えば誰もがそれだけで幸せになる、というわけではないことを示しているとも言えるでしょう。
そのようなことについてはこれまでに、「日本ではどうなの?犬の飼育とソーシャルウェルビーイングの関係」をはじめ、数々の記事で触れてきました。当然のことながら、