「ピートのパラドックス」新見解発表で再考、犬のがんについて

文:尾形聡子


[photo by Eric Isselée]

人や犬に共通して非常に多く発症する「がん」という病気。地球上のさまざまな動物、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類など、細胞分裂をする多細胞生物であればどんな種であってもがんにかかるリスクがあります。なぜなら、多細胞生物は組織の成長や維持、修復をするために細胞分裂をしますが、細胞分裂の過程でDNAの複製ミスが起こり、そのような突然変異が蓄積することががんを発症する原因となるためです。一方で、これらの生物は「がん」に対する防御機構(細胞分裂時に起こるDNA複製ミスを検出・修復する仕組み)もそれぞれに進化させてきました。

「ピートのパラドックス」って?

がんの大きな原因が細胞分裂の際に起こる複製ミスであるのなら、単純に、体を構成する細胞の数が多い方が複製ミスが起こる確率は高くなります。そのため、細胞数が多く寿命の長い動物の方が、小型で寿命の短い動物よりもがんの発生率が高いと考えられます。これについては、同じ生物種内において、人や犬で確認されていることです(「大型犬がかかりやすい病気、小型犬がかかりやすい病気」参照)。

ですが、異なる生物種間においては、体の大きさとがんの発症率は必ずしも相関していないと言われていました。これがピートのパラドックス(ペトのパラドックス)と呼ばれる1970年代に発表された理論で、発見者であるイギリスの統計学者で疫学者であるリチャード・ピート(Richard Peto)博士の名前からつけられました。

有名な例としては、

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