犬にとって飼い主はどんな存在?成人の人間関係との類似性

文:尾形聡子


[photo by Oszkár Dániel Gáti]

先日の記事、「あなたにとって犬はどんな存在? 犬と人の関係は、人と人の関係に置きかえられるものなのか」では、もし犬を人間関係の近しい何か特定の立場の人にたとえるのであれば…ということを、かなり深掘りして調べた研究を紹介しました。

ただし犬は人間ではないので、「近い」とはいえ「まったく同じ」ではないことは明らかなのですが、犬は家族の一員と考えられるようになっている現代社会において、犬の存在がどのようなものであるのかを理解するには、人間の関係性に置き換えてみることは有用な情報になると思います。

犬が飼い主と結ぶ絆は親子関係と類似していることはもはやここで説明するまでもありませんが、飼い主側から犬の立場を説明するのではなく、犬が家族の中で一番近いと感じる飼い主をどのような存在だと感じているのかについて、この記事を書きながら思いました。人間社会のカテゴリーでたとえるならばもっとも近いのはやはり「養育者」ということになってくるのでしょうが、犬と飼い主は親子関係とは異なる部分があります。たとえば前述の記事にてお伝えしましたように、親子関係は子どもが成長するにつれて力関係が変化していきますが、犬と飼い主においてはいつまでたっても基本的に飼い主が主導権を握っています。そもそも家族で犬を飼っている場合、どの人を犬が一番の養育者と思うかによって、それ以外の人に対する感じ方や接し方も変わってくることもあるでしょう。

いずれにしても、犬に「あなたは一緒に暮らしている人間たちをどのように思っているのですか?」などと聞くことはできません。そこで、犬が飼い主のことをどう思っているかを調べるために、心理学的アプローチや脳科学的、生理学的、遺伝学的、進化学的などさまざまな側面からあの手この手を使って研究が行われています。元を正せば犬も人も同じ哺乳類で家畜化された動物という共通点がある上に、長い年月をかけて共進化を遂げ、いまや犬は人の家族システムに入ってくるくらい社会的に近しい存在となっているからです。

犬が飼い主のことを養育者のようなものと考える以外に、人に置き換えてみた場合にほかにどのような関係性がありうるのでしょうか。犬を擬人化

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