新しいドッグスポーツ、フーパーズとは? その1

文と写真:藤田りか子


[Photo by doda]

アメリカ生まれ、ヨーロッパで爆発的人気になり

最近個人的にとても気になっている「フーパーズ」について紹介したい。ヨーロッパでノーズワークに並んで急成長している新型のドッグスポーツだ。面白いことにフーパーズはノーズワークとよく似た経緯で誕生した。いずれもアメリカ生まれだし、愛犬家たちのちょっとした工夫から始まっている。2000年代の初め、アジリティ愛好家の間で

「うちの子、関節を痛めてしまい…でも走るのは大好きだから…」

「ジャンプさせたくはないんですよ。でもアジリティっぽいことをしたいんだよねぇ…」

というような声が上がったそうだ。こうした飼い主たちが、自宅の裏庭やガレージでフラフープやラウンドトンネルを持ち寄り、犬のための「ジャンプしないコース」を作り始めた。これが、のちに「Hoopers」や「Hoopers Agility」「NADAC Hoopers(ナダック・フーパーズ)」と呼ばれるスタイルに発展していった。

NADACとは、North American Dog Agility Councilというアジリティの愛好団体の略。このクラブはアメリカで初めてHoopersを正式な競技種目として作り上げフーパーズの元祖クラブとして知られている。犬の体に優しいコース構成を軸に競技ルールを構築。アジリティとは似て非なる、「より流れるような動き」に焦点を当てた新たなドッグスポーツを登場させた。

その後2010年代に入ってフーパーズの噂はヨーロッパにも届いた。特にドイツでは、フーパーズは「犬に知的刺激を与える新しいドッグスポーツ」として瞬く間に愛犬家たちの支持を集めた。フーパーズの特徴である「身体的負担を抑えながら、犬のメンタル面を刺激してあげられる」が合理的なドイツ人のつぼにはまったのだろう。

アメリカのフーパーズと異なるのは、ドイツではアジリティの別バージョンスポーツとしてではなく、全く独立したスポーツとして確立させたこと。ハンドラーからの正確な遠隔指示と犬の遠隔操作性の高さを求めた。このドイツモデルをデンマークが踏襲し、さらにスウェーデンはデンマークの競技ルールを元に独自のルールを作り上げた。

そして10年後(2020年)、デンマークとドイツのケネルクラブは公認ドッグスポーツとして承認。ケネルクラブの傘下で公式競技会が開催されるようになった。私が住むスウェーデンでも同様の動きを見せており、今まさにスウェーデンケネルクラブから承認を待っている状態にある。非公式の競技会ならすでにスウェーデン全国、とくに南部地方でさかんに行われているが、ケネルクラブ公認競技となれば、その人気はドイツと同様に爆発的なものになるはずだ(ノーズワークにもそのような経緯がある)。

ジャンプじゃなくて!

アジリティと違って、フーパーズにはジャンプがない。え、それじゃ、ちょっと地味すぎないか?と思われるかもしれないが、いや、そこがフーパーズの最大の魅力なのだ。コースにいくつも置かれたフープ(輪)を犬はす〜いすいと次々に駆け抜けていく。その流れるようなパフォーマンスに誰もがうっとりするはずだ。しかも、アジリティのようなタイトなターンは存在しない。そう、体に負担がかからない。

使用する器具もいたってシンプル。フープ、トンネル、そしてバレル(樽型の障害)とゲートのみ。ドッグウォークやAフレーム、シーソーなど高価で大掛かりな器具は一切不要。家庭の庭やちょっとした広場でも十分に練習できる(そして私も自分の庭で練習しているのでありました)。

人間はといえば、所定の場所にとどまりボディランゲージと声符だけで犬を遠隔操作する。つまり派手に犬といっしょに伴走する必要がない!ハンドラーの歳(?!)や体力は関係なし。

「アジリティをするには、私、もう体力がついていかない!」

という人にとっても朗報ではないだろうか。人は楽できるし、犬のケガのリスクも少ない、導入コストもアジリティに比べたら絶対に低い。よって、フーパーズは“誰でも始められるドッグスポーツ” ともいえる。こんなところもノーズワークとよく似ている所以だ。

各障害の説明

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