文:尾形聡子
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私たちは世の中に存在するすべての物体を知っているわけではないのに、ある単語の意味に照らし合わせ、同じような形をしているものを同じカテゴリーに属する物として拡張して一般化することができます。これは乳児期から学習して獲得していく能力ですが、大人はもとより子どもも2、3歳になるとすでにこの方法でカテゴライズしていく傾向があることが知られています。
人は目新しい物体を識別する際、大きさや色彩、質感よりも形状を優先する傾向にあり、この傾向を「形状バイアス」と言います。目に見える形状から推測される物体の一般化は語彙学習などとの関連性があり、1988年に認知心理学者のBarbara Landau博士によって報告されてからこれまで数々の研究が行われています。しかし、それが語彙学習や道具の使用などとどの程度関連しているのかどうかは完全には解明されておらず、いまも議論が続けられているそうです。
人のそのような形状バイアスや語彙学習への洞察をより深めるには、形状バイアスの能力の進化過程や認知メカニズムを理解することも大切です。それには人以外の動物における物体の一般化がどのように行われているかを知る必要があります。
そこでスポットライトが当たったのが犬。犬は人とともに生活を送ってきた最古の家畜で、人と類似した社会的認知能力を進化させた動物です。人のようには言語や道具を使用しない犬の一般化